20日に第45代米大統領に就任するドナルド・トランプ氏(70)が居を構える「トランプタワー」。ニューヨークの5番街にそびえ立つ超高級マンションにかつて暮らした数少ない日本人の1人、世界的なファッションデザイナーのアケミS・ミラーさんが日刊スポーツの取材に応じ、住民しか知らない「トランプ氏の素顔」を語った。アケミさんがタワーについてマスコミの取材に応じたのは初めて。今日から3回にわたり、連載する。

 窓の外には超高層ビルが立ち並び、遠くには自由の女神が見える。ニューヨーク・マンハッタンの5番街の一等地にそびえ立つ「トランプタワー」。超高級マンションには各界のセレブや有名企業のトップが暮らす。アケミさんは92年から約3年間、タワーの60階に住んでいた。

 部屋の中の装飾はすべて金だ。アケミさんの部屋は昨年11月、安倍首相との会談で公開されたトランプ氏の自宅と同じ金ずくめ。日本では成り金をイメージさせる「金ぴか」だが実際にタワーに住んだ印象は違う。

 「世界中でぜいたくをしつくした人の一番好きなテイストをトランプ氏がつくっている。金きら金ではない。ゴールドはキングの証しなんですよ」

 「ゴールデンハウス」はフロアごとに部屋のタイプが異なり、アケミさんの部屋は広さ約150平方メートル、2ベッドルーム。「天井は普通の住宅よりも約1・5倍と高く、圧迫感を感じない」。当時の家賃は1カ月、数百万円だった。

 「暴言王」といわれるトランプ氏だが、タワーのセキュリティーの緻密さに世界のセレブたちはうなった。「トランプ氏は賢く、えらい」。正面入り口を利用するのはショッピングモール(5階まで)を訪れる観光客と、オフィス(6~35階)の人たちだ。タワーの住民には特別な入り口が用意されていた。

 「正面入り口から左の角を曲がったところに小さなドアがあり、ドアマンが4人いました」。小さな入り口に4人もいれば、簡単に素通りはできない。次にボディーチェックなどをする数人のセキュリティーがいる。

 さらに進むと、右側に小さなコンシェルジュ、奥には4機のエレベーターがあり、それぞれに専属のエレベーターマンが24時間いた。「彼らは住民の顔と何階の何号室に住んでいるかすべて覚えていた。もし住民ではない人が乗り込めばボタンを押さない」。住民の間では「ネズミ1匹すら通さない」と言われるほど完璧だった。最新のテクノロジーではなく、「人による防御」に重きを置いたトランプ氏。アケミさんは言う。「実はすごく繊細なんだと思う」。その一方で「せこいトランプ氏」も見た。【松浦隆司】

 ◆アケミS・ミラー 兵庫県生まれ。世界的なファッションデザイナー。生家はきもの学校。73年から京都で着物を学び、79年に東京で「曽根あけみレディースビューティーアカデミー」を開校。20歳代からきものデザイナーとして活躍。89年に活動拠点をニューヨークに移し「AKEMI STUDIO」を設立。94年から故マイケル・ジャクソンさんのプライベートの洋服を制作。25年にわたりニューヨーク・コレクションで洋服を発表した。15年に大阪市で「AKEMI S・MILLER Beauty Studio」を設立。大阪市在住。