20日に第45代米大統領に就任するドナルド・トランプ氏(70)が居を構える「トランプタワー」。ニューヨークの5番街にそびえ立つ超高級マンションにかつて暮らした数少ない日本人の1人、世界的なファッションデザイナーのアケミS・ミラーさんが日刊スポーツの取材に応じ、住民しか知らない「トランプ氏の素顔」を語った。

 「ハーイ!」「ハワー、ユー」。黄金に輝くトランプ・タワーの60階に住んでいたアケミさんは出勤のとき最上階に住むトランプ氏とエレベーターで一緒になることもあった。気さくにあいさつするトランプ氏はタワーからリモ(ハイヤー)をよく利用した。

 「これがせこい(笑い)。車種が古い。セレブが乗っているようなピカピカのメルセデスベンツのリモではなく、これって昔のキャデラック? そんな車だった。しかも運転手はいかにも品がなさそうだった」。タワーに事務所があるトランプ氏はリモカンパニーと契約していた。「不動産王」として莫大(ばくだい)な富を手にしても、数あるリモカンパニーの中でも普段、利用するのは安いリモを選択していたようだ。

 世界的なファッションデザイナーとして各界の著名人と接してきたアケミさんは「せこいリモ」に平然と乗るトランプ氏に「締めるところは締める。すごく堅実な実業家ですね。そうでなければあんなせこいリモには乗らないでしょう」。

 その一方でトランプ氏の68階の自宅には25メートルプールがあった。パーティーの時はプールサイドにすしバーが設けられ、セレブたちが集まった。贅(ぜい)を尽くすところにはお金を惜しまない。ドケチとは違う、一面があった。

 90年代に入り、参入したカジノのホテル経営などの失敗でトランプ氏は債権者から追われる日々を過ごした。アケミさんは何度もトランプ氏の有名な「たいへんな話」を耳にしたという。

 トランプ・タワーに帰る途中、トランプ氏はリモから降りて5番街のホームレスのいる場所に立ち寄り、「たいへんだね」とチップを渡した。続けて「でも僕は君よりもっとたいへんなんだよ」。世間から注目を集めていることを逆手に取り「会社がたいへんなんだ」とあえて恥部をさらけ出す。ビジネスマンとして生き残るための「戦略」だった。アケミさんが暮らしていたある日、タワーに故マイケル・ジャクソンさんが引っ越してきた。トランプ氏が引き寄せた。【松浦隆司】

 ◆アケミS・ミラー 兵庫県生まれ。世界的なファッションデザイナー。生家はきもの学校。73年から京都で着物を学び、79年に東京で「曽根あけみレディースビューティーアカデミー」を開校。20歳代からきものデザイナーとして活躍。89年に活動拠点をニューヨークに移し「AKEMI STUDIO」を設立。94年から故マイケル・ジャクソンさんのプライベートの洋服を制作。92年から3年間、トランプ・タワーで暮らした。25年にわたりニューヨーク・コレクションで洋服を発表した。15年に大阪市で「AKEMI S・MILLER Beauty Studio」を設立。大阪市在住。