米国の新大統領は計算高く戦略的-。トランプ・タワーに居住していた日本人デザイナーのアケミS・ミラーさんは、ドナルド・トランプ氏(70)の素顔を、故マイケル・ジャクソンさんとの親交から迫った。

 トランプ・タワーのアケミさんの60階の自宅の隣には、米人気歌手ジャネット・ジャクソン、階下にはイタリアの女優ソフィア・ローレンが住んでいた。その他にもソフトウエア最大手マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、米映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏…。「ゴールデンハウス」には世界のセレブが集まってきた。

 ある日、62階にマイケル・ジャクソンさん(故人)が引っ越してきた。

 当時、マイケルさんはリサ・プレスリーとの離婚騒動で世界中のマスコミから追われていた。トランプ氏はタワーの1フロアのすべてをあけて「トランプ・タワーが一番安全」とマイケルさんを迎え入れた。

 アケミさんはエレベーターでマイケルさんと偶然、出会った。マイケルさんはアケミさんの作品を気に入り、94年からプライベートのシャツなどを手掛けるようになった。

 マイケルさんが入居した後、ニューヨーク・ポストにトランプ・タワーの近くにある話題のフレンチレストランで食事をするマイケルさんとトランプ氏の2ショット写真が掲載された。「あれは(トランプ・タワーを)PRする戦略でしょう」。騒動の渦中にあったマイケルさんが平穏に暮らすことができ、しかもタワーを所有するトランプ氏となら安心して外食もできる-。アケミさんにはメディアを最大限に利用するトランプ氏の戦略がみてとれた。

 大統領選では挑発的な態度、自己アピールを巧みに織り交ぜた話術で支持者を増やした。11日の大統領選後初めての記者会見では、メディアへの敵意をむき出しにして「トランプ節」をさく裂させた。トランプ氏VSメディアの構図にアケミさんは「いかにメディアをうまく使っていくかを常に意識している。みなさんが思っているよりも、もっともっと緻密で堅実ですね」。毒舌を繰り返し、不動産王から米大統領の座まで上りつめたトランプ氏。その素顔は「したたか」だ。【松浦隆司】(おわり)

 ◆アケミS・ミラー 兵庫県生まれ。世界的なファッションデザイナー。生家はきもの学校。73年から京都で着物を学び、79年に東京で「曽根あけみレディースビューティーアカデミー」を開校。20歳代からきものデザイナーとして活躍。89年に活動拠点をニューヨークに移し「AKEMI STUDIO」を設立。94年からマイケル・ジャクソンさんのプライベートの洋服を制作。92年から3年間、トランプ・タワーで暮らした。25年にわたりニューヨーク・コレクションで洋服を発表した。15年に大阪市で「AKEMI S・MILLER Beauty Studio」を設立。大阪市在住。