東京都の小池百合子知事は20日の定例会見で、土壌汚染問題を抱える豊洲市場の用地購入を巡る住民訴訟に関し、購入当時の責任者だった石原慎太郎元知事に賠償責任はないとしていた従来の都の方針を見直すと表明した。

 訴訟は都民が原告となり12年5月に提訴。石原知事時代に汚染された土地を東京ガスから購入した経緯について「都知事の裁量権を逸脱した違法行為」とし、責任を追及。都が石原氏に(購入費)578億円を請求するように訴えてきた。これまで21回の口頭弁論などで都は一貫して石原氏に責任はないとの方針だったが、小池氏は「責任をあいまいにしてはいけない。いま1度、立ち止まって考える」とし、都側の弁護団の総入れ替えと、訴訟対応特別チームの設置を決めた。

 都特別顧問の加毛(かも)修弁護士によると、小池氏が訴訟への対応見直しを言及したのは今月上旬。地下水から基準値の79倍のベンゼンが検出された第9回の調査結果が出る前だった。加毛氏らも昨年12月中旬以降、調査を始めており、豊洲の土地売買契約、土壌汚染について再度精査すべきとの方向で一致した。

 訴訟代理人は3人だったが、3月まで徹底調査するため8人程度まで増やす。2月9日に予定される口頭弁論では延期を申し出る。

 当時の用地購入に当たっては、売買後に土壌汚染が残っていた場合、売り主である東京ガスが責任を負う瑕疵(かし)担保条項がないなど、不可解な点が多く指摘されてきた。

 小池氏はこれまで、石原氏に対して聞き取り調査などを要求してきたが、書面での回答など肩すかしにあってきた。今回は、加毛氏も「都に有利か不利かでなく、都民に正しい情報を知らせるため情報開示制度を全面的に利用し、明らかにしたい」と話しており、司法の場で徹底的に石原氏の責任問題を洗い出す覚悟を決めた形だ。【三須一紀】