共和党のドナルド・トランプ新大統領(70)が20日、首都ワシントンの連邦議会議事堂前で宣誓し、第45代大統領に就任した。就任演説では「米国第一」主義を強調したが、就任に抗議するデモ隊の一部が警官隊と衝突するなど、暴徒化。217人が拘束された。大統領就任式では1969年のニクソン大統領のときに81人が逮捕された例があるが、今回はそれを大きく上回り、米社会の分断の深さを浮き彫りにした。

 トランプ氏の地元ニューヨーク、マンハッタン5番街のトランプタワー近くでも、就任式に合わせて複数の団体による抗議デモが行われた。ティファニーなど高級店が立ち並ぶ周辺は、バリケードで囲まれ、多くの警官が厳戒警備。異様な雰囲気の中、タワー向かいの「プラダ」前では約60人の団体がプラカードを掲げ「トランプ政権によるファシズムにNO!」とシュプレヒコールをあげた。

 5番街を歩く買い物客らの声も、悲観的なものがほとんどだった。「アメリカにとって、世界にとって悲しい日だ」(45歳男性)「トランプはひどすぎる。金もうけしか考えていない」(62歳男性)。28歳女性は「非常に不安です。人種差別、女性差別などの偏見が当たり前になるなんて許せない」と憤った。

 一方、「大統領としてうまくやってほしい」と期待する声もあったが「彼の態度はアメリカの国際的な立場をよくするとは思えない」と過激な言動への懸念も。昨年11月の大統領選では民主党候補のクリントン氏が圧勝したニューヨーク。新大統領の誕生を見つめる市民の目は厳しかった。(ニューヨーク=鹿目直子通信員)