豊洲市場(東京都江東区)移転をめぐる用地取得問題に関し、渦中の石原慎太郎元都知事(84)は8日、都の特別委員会が求める参考人招致に応じる考えを明かした。「絶好の機会。喜んで行きます」と述べた。小池百合子都知事に、逃げ腰を批判されてきたが「逃げるのがいちばん嫌い」と反論した。虚偽証言にも罰則がない参考人招致の出席は、より強い権限を持つ百条委員会回避の「手打ち」との見方もある。石原氏はどこまで真相を語るのか。

 慎太郎氏は都内の自宅前で、取材に「私が知っていることを全部話す。困る人が出るかもしれないが、こっちも困っている。生殺しになっている築地の業者のためにもはっきりさせた方がいい」と述べた。

 公開ヒアリングを求めてきた小池百合子都知事に、逃げ腰を批判され続けてきた念頭に、「私は逃げるのがいちばんいや」と反論。特別委員会では小池氏と直接対決することはないが、「私から、小池くんに言うこともある」と、因縁の相手へ発言も予告した。

 一方、「移転の最終判断をしたのは石原さんか」と問われると、「最終的に、幹部が『議会も承認してくれたので裁可願いたい』と来た。幹部が誰か思い出し切れない。都庁の責任で調べてほしい」など、核心部分には言葉を濁した。

 各会派の温度差から、実現しなかった参考人招致。勢いを増す小池氏が、住民訴訟で石原氏にターゲットを定め、重い腰を上げた委員会が実施を決めた翌日、慎太郎氏が応じた。説明責任を求められ、追い詰められている側面は大きい。

 ただ、参考人招致は、虚偽の証言をしても罰則はない。慎太郎氏はこれまで、東京ガスとの用地売買交渉などを、側近の浜渦武生氏に任せていたと主張。東ガスは今回招致の対象ではなく、双方の主張を検証するには時間がかかる。都関係者は「罰則がある百条委で証人喚問される前に、自分のペースで話せると踏んだのだろう」と指摘した。

 百条委の設置には越える壁も多い。委員会を仕切るのは、かつて石原都政を支えた自民党だ。別の関係者は「自民党の追及が甘ければ、水面下の『手打ち』が疑われかねない」と話す。慎太郎氏は「資料には黒塗りが多い。都合の悪い人がいるかもしれないからだろう。全部公開したほうがいい」「早くやってほしい」と意欲満々だが、全容解明には、かつての歯切れよい慎太郎節が不可欠だ。

 委員会は来月にも行われる。小池氏は、慎太郎氏の対応について「よろしくお願いします」と述べた。