東京都小金井市で昨年5月、歌手活動をしていた冨田真由さん(21)が刺されて重傷を負った事件で、殺人未遂罪などに問われた無職岩埼友宏被告(28)の裁判員裁判は23日、東京地裁立川支部(阿部浩巳裁判長)で結審した。冒頭で冨田さんが十数分間、意見陳述を行った。これまでも検察席の背後についたてを立て、公判の一部を傍聴したが、発言は初めて。同じ場所からマイクを使い、しっかりした口調で話した。

 「友人との時間、大学での勉強、音楽やお芝居。犯人の身勝手な行動のせいで、失ったものは数えきれません。傷のない、元の身体を返してほしい」

 事件の恐怖で外出が難しく、身体にまひがあることを吐露。「犯人が腹立たしく、気がつけば泣いています」。被告に反省がないことを指摘し、「こんな人を野放しにしてはいけない」と強調すると、岩埼被告の怒声が響いた。

 「じゃあ、殺せよ!」

 冨田さんに「私を恨んで、今度こそ私を殺しにくるかもしれない」と危惧されると、「殺さない!」と叫び退廷を命じられた。職員に付き添われ退出する間も、「殺すわけないだろ!」「殺すわけがない!」と絶叫。廷内は騒然となり一時休廷した。

 陳述書の残りは検察官が読み上げ冨田さんは厳しい判決を望んだ。体調不良を訴え検察側の論告の途中で退出。検察側は「常軌を逸した自己中心的な犯行」と懲役17年を求刑。弁護側は最終弁論で計画性を否定。被告は廷内に戻らなかった。判決は28日。【柴田寛人】