女性が意に反したAV出演を強要される「AV出演強要問題」。被害者支援団体に寄せられる相談は年々増えている。

 昨年3月にAV出演強要問題の調査報告書を公表した国際人権団体「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」では再発防止に向けた規制強化を国に求める提言を行っている。事務局長の伊藤和子弁護士には被害女性たちから、ビデオ販売の差し止め依頼などが寄せられているという。伊藤氏は「1件でも深刻な人権侵害であり、防止する仕組みを作るべきだ」と訴える。

 伊藤氏は、AV出演の強要について「刑法の人身売買罪も適用すべき深刻な犯罪」と指摘する。昨年8月にはAVの業界団体「知的財産振興協会(IPPA)」に、意に反した出演の禁止、違約金請求の禁止、真実を告げないスカウトの禁止、本番の禁止などを要請している。

 法規制をめぐっては、表現の自由の議論もあるが、伊藤氏は「出演強要の被害者は表現の前段から被害に遭っており、表現者ではない。強要被害の上に成り立つ表現の自由が野放しでよいということは公共の福祉に照らして、あり得ない」と話している。

 国際人権団体のHRNでは国内企業が海外に置いた生産拠点での人権問題にも取り組む。伊藤氏は「別の業界では海外の工場での問題であっても、問題を指摘してからすぐに第三者委員会が立ち上がることが多い。AV業界は反応がにぶいと言わざるをえない」とも話した。