豊洲市場の移転を決めた元東京都知事の石原慎太郎氏(84)が3日、日本記者クラブで会見し、「最高責任者の責任は認めます」と話した。一方で、東京ガスの瑕疵(かし)担保責任放棄を盛り込んだ11年3月の土地売買契約については「報告も相談もなかった」と従来の主張を繰り返した。豊洲への移転を延期した小池百合子都知事には「迷走の責任は小池さんにある」と攻撃。会見を聞いた小池氏は「石原さんらしくない」とバッサリ。石原氏の証人喚問が予定される20日の百条委員会を前に対立姿勢が一層鮮明になった。

 「果たし合いに出かける昔の侍の気持ち」(石原氏)で臨んだ記者会見。ダークスーツ姿で時折苦笑いを浮かべながら会場入りした石原氏は冒頭、「百条委員会をとても待てない心境。私はね、座して死を待つ気はございません」と石原節をぶちかました。

 小池氏から「逃げている」と批判された不名誉な状態を、どんな新事実を明らかにして覆すのか。注目の会見だったが、石原氏は自らの「最高責任者としての責任」は認めながら「専門家は科学的に豊洲は危険がないと言っている。なぜ豊洲に移さないのか。小池さんには不作為の罪がある」と、反撃姿勢を見せた。

 質疑では、11年3月の東京ガスとの売買契約書に盛り込まれた瑕疵担保責任を放棄した経緯に質問が集中した。石原氏は、当初の用地買収交渉について「浜渦武生元副知事に一任していた。大まかな報告は受けたかもしれないが、逐一報告は受けていない」と説明。瑕疵担保責任の放棄については「記憶はないし、相談も受けていない」。契約書には東京ガス社長や石原氏の知事印があるが「私自身が東京ガスとの契約書にサインした覚えはない」「ハンコが使われたんじゃないか」とも話した。

 土壌汚染対策も契約内容も「専門的な問題」で「都庁の専門部局が検討し、議会も承認した」と責任の範囲を拡大。「私1人というより行政全体の責任。検証の必要がある」と苦しい防戦の弁も目立った。

 報道陣からは、会見に向け、浜渦氏ら交渉当事者から経緯を聞いておくべきだったとも指摘された。石原氏は「戻って聞きますよ。誰に聞いたらいいんだ。浜渦君か、もう1人か」とニヤリ。ファイティングポーズは崩さなかったが、名誉をかけた「果たし合い」にしては、決定打のない第1ラウンドとなった。第2ラウンド、百条委員会による証人喚問は20日に行われる。【清水優】