豊洲市場の移転問題を検証する都議会の調査特別委員会(百条委員会)で19日、豊洲移転を決めた石原慎太郎元都知事(84)の腹心、浜渦武生元副知事(69)の証人喚問が行われた。浜渦氏は東京ガスと01年7月に移転の基本合意に至って以降は関与していないと述べた。共産党の吉田信夫都議は、03年に担当部長3人が浜渦氏に東京ガスとの交渉を相談したという文書を提示したが、否定。強気の答弁も不透明な交渉の疑惑が晴れるような説明はなかった。

 石原氏の腹心、浜渦氏はダブルのダークスーツに黄色いネクタイ姿で現れた。05年の百条委員会から12年ぶり2度目の証人喚問。スタート前には、議員に笑顔で会釈していたが、尋問が始まると、時に声を荒らげて潔白を主張するシーンもあった。

 浜渦氏は00年10月から、地権者で当初は市場用地に適さないとしていた東京ガスとの交渉をスタート。都の記録では「水面下でやりましょう」と折衝を始め、約半年後の01年2月21日に、東京ガスとの「覚書」をまとめ、01年7月6日に基本合意まで持ち込んだ。

 経緯について「『水面下』というのは東京ガスから提案があり、私も『水面下、結構です』と申し上げた」と強調。「水面下という言葉は悪い言葉とは思っていない」と胸を張った。

 基本合意後の01年7月18日に都と東京ガスの間で「確認書」が交わされた。土壌汚染対策の具体的方針を定めたこの確認書(2者間合意)が、後に汚染土壌の瑕疵(かし)担保責任の放棄につながる。土壌汚染対策費は用地売買後も含めて約860億円まで膨らみ、大半を都が負担することになったが「基本合意以降は担当を外れ全く分からない」「不届きな話」「2者間合意など知らない。(都幹部が)よく勝手なことをしてくれた」と声を荒らげた。

 01年7月6日の基本合意以降、交渉に関与していないと繰り返したが、共産党の吉田氏は03年5月22日付の「豊洲地区土壌汚染対策について」という書類を提示。宛先は副知事だった浜渦氏で、発信者は都庁知事本局と環境局と新市場建設担当の3部長の連名で浜渦氏に「おうかがいを立てている」とし「この文書を見ていないか」と質問した。浜渦氏はこれにも「ありません」と否定した。

 都民ファーストの会の音喜多駿都議から責任を追及されると「どこに責任があるんですか」と激しく反論した。偽証すれば告発されることもある百条委員会。同氏は、05年の百条委員会で偽証と議決され、副知事辞任に追い込まれた経験もあるだけに、「偽証罪」をちらつかされても最後まで主張はぶれなかった。

 焦点となった東京ガスとの「不透明な交渉」疑惑。東京ガスの負担が免責され、都民の税金でまかなわれた巨額の土壌汚染対策費用。豊洲の用地買収のキーマンの尋問でも、新たな詳しい経緯が明らかにされることはなかった。【清水優、三須一紀】