東京都の小池百合子知事(64)は20日、豊洲市場の移転問題を検証する都議会の調査特別委員会(百条委員会)で、石原慎太郎元都知事(84)の証人喚問が行われたことを受け、都庁内で報道陣の取材に応じた。

 取材の中で、豊洲市場の地下水の9回目のモニタリング検査の結果、有害物質のベンゼンが最大で環境基準の100倍も検出されたことや、新事実の解明に至らなかった百条委員会が、豊洲への移転スケジュールに影響を与えるかと質問が出た。小池知事は、今後の検証を含め、総合的な判断が必要だとし具体的な時期は明言しなかった。一方で「安心の基準を数値で表すのは、なかなか難しい。そういったことも含め、都民の方も総合的に判断するからこそ、材料を提供しなければならないと思っているわけです」と発言した。

 小池知事は、移転スケジュールへの影響を聞かれると、次のように答えた。

 小池知事 市場の信頼と、もっと言えば都政の信頼と、消費者の信頼を勝ち取るためには、これまでの検証も含めて、私がよく使う言葉ではありますけれど、総合的な判断が求められると思います。専門家会議の今後の結論も聞いておりません。地下の部分に対しての対処法、どういう方策があるのかも考えていると思います。そこも踏まえてみてきたい。今回のことでどれくらい影響が出るか精査したい。

 石原元知事が、豊洲の移転に関する安全基準について「地下水について厳しい基準を設けたのは間違いないがハードルが高すぎたかもしれない」と語った上で、科学を根拠に移転を進めるよう主張したことについては、次のように答えた。

 小池知事 石原元知事ご自身がハードルを上げたということを明言されておられました。それは、やはり豊洲に生鮮食料品を扱う市場を移すということへの配慮であったということだと思います。ですから、私は、これまで高く上げたハードルをクリアできるか、ということをモニタリングの継続という形で進めてきたわけであります。よって、新たに石原さんが上げられた基準をどうやってクリアしていくのかという意味で、いろいろな検証も行ってきたわけであります。それを行う中で、地下に空洞があったとか、逆に言えば盛り土がされていないとか、新たな問題が出てきたわけであります。

 その上で、百条委員会が今後も調査を継続することや、専門家会議や市場問題プロジェクトチームの調査の推移が、都民の判断材料として重要だとの考えも示した。

 小池知事 石原元知事の百条委員会での発言があり、まだこれからも続くと議会の方ではおっしゃっているようでございますので、関係者の言葉をクロスチェックしながら、誰がいつどうやって決めたのか、明るみに出ることが、都民の都政への信頼、もしくは、なぜこうなったのかを理解するのにつながると思う。なぜ、あれほど高い土壌汚染対策費がかかったのか、なぜ建築費に、あれほどのお金がかけられたのか、そういったことも、まさしく総合的な話だと思う。安心の基準を数値で表すのは、なかなか難しい。そういったことも含め、都民の方も総合的に判断するからこそ、材料を提供しなければならないと思っているわけです。

 都民が都政を判断し、直接、民意を反映させる機会として、7月には都議選が予定されている。そこをも踏まえたととれる発言まで口にした小池知事は、涼しげな笑みを浮かべて都庁を後にした。【村上幸将】