新たな“籠池爆弾”が浮上した。大阪市の学校法人「森友学園」の籠池泰典氏は23日、衆参両院で行われた証人喚問で、小学校建設を計画した国有地の取得に絡み、安倍晋三首相の昭恵夫人付きだった政府職員が、財務省に問い合わせていたと暴露した。職員が予算措置に言及し、夫人にも伝えたと記した「証拠」のファクスも明示。首相が否定してきた夫人側の「関与」が浮上した。籠池氏は、夫人から100万円を受けた際の様子も証言。夫人は否定のコメントを発表したが疑惑は深まり、首相夫妻は窮地に追い込まれてきた。

 籠池氏は新たな“爆弾”で、首相夫妻や官邸に先制攻撃を仕掛けた。小学校建設を計画した国有地の取得に絡み、昭恵夫人付きだった経産省出身の谷査恵子氏が、籠池氏の要望を受けて財務省に問い合わせたことを示す、15年11月15日付のファクスを暴露した。

 「内閣総理大臣夫人付」の肩書がついた谷氏は、国有地の売買予約付定期借地契約に関し、財務省の国有財産審理室長に問い合わせたと記述。「国側の事情もありご希望に沿うことはできない」との認識を示した。一方、工事費の立て替え払いで「平成27年度の予算で措置ができず、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」とも言及。衝撃の「物証」に委員会室は「おおお」と、どよめいた。一方で谷氏は「引き続き、当方としても見守りたい」「昭恵夫人にも報告させていただいている」と、夫人とのつながりも示唆。籠池氏は「(谷氏から)財務省に多少、動きをかけていただいた」と述べ、「効果」を強調した。

 籠池氏は、ファクスが送られてくる前に夫人に電話したと主張。「海外出張中だったが、谷さんに電話をしてくれ、谷さんからすぐ電話があった」。事実なら、籠池氏の要望に谷氏が夫人の代理で応じた形。官邸は、谷氏が籠池氏の依頼を断ったことを強調する目的で同じファクスを公開したが、完全に後手に回った。

 民進党の枝野幸男氏は、用地取得や小学校認可への夫妻の関与を否定してきた首相の説明と「違う。重い証言だ」と指摘。うその証言なら偽証罪に問われると迫ったが、籠池氏は「間違いありません」と述べ、腹をくくった様子だった。

 籠池氏は、夫人から100万円の寄付を受けたとする際の様子も証言。「お付きの人を外させ、2人きりになり『安倍晋三からです』と、封筒入りの100万円の金子(きんす)をもらった」と主張。「私たちは大変名誉なことで覚えている」と述べた。夫人から「口止めとも取れるメールが届いた」とも述べたが、「事実は小説より奇なり。私が申していることが事実だ」と、言い張った。

 籠池氏の自信満々な主張に、喚問前より疑惑が深まる想定外の展開。菅義偉官房長官は、ファクスについて「全くのゼロ回答」と主張、寄付も「1対1ということはない」と完全否定。首相も、官邸を出る際に「既に答えている通り」と述べたが、自身や夫人が一連の問題に関与していれば、首相も議員も辞めるとした発言の重みが、じわじわ効いてきている。「首相への侮辱」として証人喚問に応じた自民党の戦略は裏目に出た。野党は、籠池氏と同じ証人喚問で昭恵夫人が証言するよう要求。応じなければ逃げの印象は否めない。政権には大打撃だ。【中山知子】

 ◆金子(きんす) お金、金銭、貨幣の古い言い方。銀子(ぎんす)とも言う。小さいものに「子」という接尾語を付ける表現は多く、「金子」は直訳的に、少量の金銭を意味する。貸借したお金にかかる費用「利子」も、同様の表現。動植物の「卵子」「精子」「種子」は、小さいという意味が込められている。