ぼくは内科医。そんな人間が、「検査なんか嫌いだ」(集英社)なんていう本を2月末に出版した。今まで人間ドックを受けたことは1度もない。もちろんすべての検査を否定しているわけではない。検査は嫌だが役に立つ、と思っている。できるだけ最小限度にしようと思っている。痛くない検査、お金のかからない検査など、健康で幸せに長生きできる検査は何か、書いてみた。

 世界一の長寿国の日本で、ドック検査ですべて正常の人が6・6%しかいないという事実を考えると、検査が病気を作っている可能性もありそう。

・効果の高い検査は受けよう

 約50のアメリカの医学会が、無駄な検査や医療、ベスト5を公表している。

 「70歳を超える高齢者のコレステロール値を下げてはいけない」。コレステロール値が低い方が死亡率が高い。だからコレステロールの検査なんか、数多く受けなくていいのだ。「予測される寿命が10年以内の人ががん検診を受けるのはほとんど無意味」。治療についても言及している。「胃ろうを簡単にしてはいけない」「テストステロン値が正常な男性のED(勃起不全)治療に、テストステロンを使用しても、性欲は上がるが勃起力はあがらない」など、アメリカでは無駄な医療や無駄な検査をやめようという動きが出てきている。

 健診も科学的な根拠がないと言っているが、便潜血反応による大腸がん検査や、女性の子宮頸(けい)がん検診、マンモグラフィーによる乳がん検診は意味があると言っている。しかし日本では、この意味があると言われている健診の受診率が低い。しかし、遺伝子検査やPET検査など高い検査は好みのようだ。立ち止まって考えてみよう。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。