・メタボ健診は好きになれない

 メタボ健診については、健診の始まった当初からあまり意味がないのではないかと疑問を持っていた。BMI25以上を肥満としているが、BMI25~30のちょい太は、結構長生きすることがわかっている。コストをかけて、ちょい太を見つけても成果は低いと僕は思っている。BMI30以上の本格的な肥満は、健診をしなくても誰が見たってわかる。

 メタボは「内臓脂肪症候群」という。CTをとると、内臓脂肪が多すぎていないか正確にわかる。しかしそのためにCTをとる必要があるとは思えない。コストが高い。わずかだが被ばくをする。エコー検査をすると、脂肪肝があるかどうかがわかる。しかしそのためにエコー検査をする必要があるとは思えない。

・メタボより怖い低栄養

 2016年、厚労省は、高齢者の保健指導にとって最重要なのは「メタボ」より「虚弱・フレイル」だと発表した。その通りだと思う。

 地域包括ケアで往診をしている医者からみると、メタボによる寝たきりよりは、フレイルによる寝たきりの方が圧倒的に多いということは、以前からわかっていた。

 栄養不足によって認知機能が低下することもわかった。筋肉が減ることによるロコモティブシンドロームになっていることもわかった。膝関節の痛みや腰痛症が寝たきりの原因になっているのだ。しかし75歳から急に、肥満から虚弱に問題が変わるわけではない。むしろ50歳から65歳くらいの間の生き方が大事である。ここでフレイルという虚弱にならないために、「たっぷりタンパク」が必要なのだ。

 少し太っているくらいが、将来の寝たきり予防にはいいのだ。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。