吉野正芳復興相(68)は就任翌日の27日、福島、宮城両県を訪れ、「おわび行脚」の初仕事をこなした。東日本大震災の被災地に対する心ない言葉で更迭された今村雅弘・前復興相の発言を、両県知事に謝罪。信頼関係の回復に努める意向を示した。自身も被災者の吉野氏は、衆参両院の委員会で所信表明も行い、「現場主義に徹し、被災者に寄り添いたい」と主張。復興加速、「今村ショック」からの体制再構築とダブルの重い役目を背負った。

 「信頼関係の回復が、私の初仕事です」。吉野氏は「おわび行脚」の理由をこう説明した。東日本大震災に関し「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と述べ更迭された今村氏への不信は、安倍政権にそのまま向いているからだ。

 吉野氏は、福島県庁で内堀雅雄知事と会談。「今村氏の発言で信頼を失った。信頼を回復したいとの思いで訪れた」と謝罪した。宮城県の村井嘉浩知事にも「東北の多くの方を傷つけた」と、頭を下げた。

 内堀氏は「信頼を回復し、復興を前に進められるよう力を発揮してほしい」と注文。村井氏は「復興庁は今、信頼を失っている」と苦言を呈しつつ、「被災者に寄り添ったリーダーシップを」と求めた。岩手県は来月1日に訪問する。

 吉野氏の地元は震災被害を受けた福島県いわき市。自宅は半壊、事務所も津波被害に遭った。26日の就任会見では、国会日程を理由にこの日の被災地訪問は流動的としたが、早期の直接謝罪が必要と判断し、急きょ予定を組み込んだ。

 訪問に先立ち、衆参両院の東日本大震災復興特別委では、「被災した者の1人として、被災者の声に耳を傾け苦しみや痛みを共有してきた」とした上で、「新しい東北の創造に取り組みたい」と主張。東京五輪・パラリンピックを復興五輪とする取り組みに意欲を示した。

 当選6回で、今村氏と同様に今回が初入閣。被災者との目線も近く、「最初から吉野氏にしていれば…」(永田町関係者)との声も聞かれる。ただ吉野氏は、「これから被災地の課題を把握したい」と述べた。地元福島以外の東北3県の現状把握が急がれ、おわびの後も課題は山積みだ。