安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、「総理のご意向」などとする内部文書が表面化した問題で、今年1月まで文部科学省の事務次官を務めた前川喜平氏(62)が25日、都内で会見し、文書について「私の在職中に、実際に共有していた文書だ」「あったものをなかったことにはできない」と明言した。

 前川氏は、当時事務方トップとして計画に携わった当事者。今回の問題で、文書の存在を確認できなかったとした文科省や、文書を「怪文書のようなもの」(菅義偉官房長官)としている首相官邸の言い分とは真っ向から対立した内容で、安倍官邸との「全面戦争」に突入した形だ。

 前川氏は、国会から証人喚問を求められた場合には「(要請が)あれば参ります」と述べ、うその証言をした場合は偽証罪に問われる証人喚問にも応じ、証言する構えを示した。

 また、「文科省は負いかねる責任を負わされた。(計画の経緯は)行政のあり方として非常に問題があった」と指摘。「黒を白にしろといわれ、文科省は本当に気の毒だと思う。私は辞めた立場だが、現在の文科省は官邸中枢からの意向に逆らえない状況があるのではないか」とも述べた。

 公になった文書8枚については「部下が上司に、複雑な課題をわかりやすく説明するために整理したペーパー。日付も担当課も書かない」と説明した。

 前川氏は、文部科学省による組織的天下り斡旋(あっせん)問題の責任をとって、今年1月、引責辞任に追い込まれている。