将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が21日、大阪市の関西将棋会館で指された王将戦予選で若手実力者の澤田真吾六段(25)を破り、歴代1位の連勝記録となる神谷広志八段の28連勝(87年)に並んだ。

 脳科学者の茂木健一郎氏(54)は藤井聡太四段について、20日に引退した加藤一二三・九段、羽生善治3冠と並ぶ頭脳を持つ、「ニュータイプの天才」と称した。幼稚園時代に四則演算をこなした計算力に驚嘆するとともに、インターネットで勉強した情報処理力は普通の人の「9倍速」で成長していると分析。新たなスターは「脳力」に満ちあふれていた。 茂木氏が思わずうなった。「驚くべき計算能力の高さです」。藤井四段の幼稚園時代に解いたという四則演算のパズルを見た瞬間だ。足し算、引き算、掛け算、割り算の方法やルールを覚える。掛け算は兄が覚える時にかけていた九九の音楽を聴いて、一緒に歌って覚えたという。割り算はその逆で、考え方を教えてもらって自分でものにした。しかも、初級から中級、上級とレベルアップした。

 興味が将棋になっても計算で磨いた応用が効いた。

 「駒の動きや、棋譜を頭の中で描いて情報を処理する。すでにワーキングメモリーが鍛えられているから、それを基礎に脳の思考回路が柔軟に対応し、使えば使うほど回路の範囲が広がっていくんです」

 さらにインターネットを駆使して、過去の対局の情報を収集する。

 「情報環境を利用して早回しで論理的に考える。5歳で将棋を始め、14歳ですでにこのレベル。脳科学では1万時間の法則というのがあり、1日3時間の練習で10年続ければ誰もが上達すると学術的に証明されています。藤井さんはその9倍速くらいのスピードでレベルアップしています」

 まさにIT時代ならではの天才。ここがニュータイプたるゆえんだ。

 もちろん、加藤九段、羽生3冠と同じで、天才にありがちな“変人的”要素もある。加藤九段は右銀を繰り出す棒銀戦法に最後までこだわった。羽生3冠は22年前、棋譜をパソコンで取り込んで勉強する先駆者の1人だった。藤井四段は詰め将棋で鍛えたという。

 「人から何を言われようが集中して、自分なりの方法論を持っている。しかも、楽しいことをやれば脳も上機嫌の状態になり、潜在能力を発揮する」

 14歳でこれだけの能力があるが、脳の働きは何歳でピークを迎えるのか?

 「記憶力、学習能力は幼ければ幼いほど発達します。直感や判断力は経験や個人差、どんな生活をしているかが大きく左右します」

 藤井四段はこの先、戦えば戦うほど「脳力」がアップし、能力の高さを発揮してくれそうだ。