2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が6月30日、主会場となる新国立競技場の後利用について、球技専用が望ましいとの考えを示した。東京大会の進展状況を話し合う国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会後の会見で語った。

 「日本のスポーツ施設は本当に充実していると思いますか?」と、疑問を投げかけた。これまでのスポーツ施設整備について「陸上競技場ができても、必ず陸上だけではもったいないとなり、真ん中に芝生を整備し、サッカーやラグビーをやってきた。ただ、球技だとスタンドから見えづらくなり、臨場感に乏しくなる」と説明。

 日本各地のスタジアムは陸上、球技の併用が多い。しかし昨今、多くの集客力が望める球技にとっては陸上トラックを隔てての観客席では遠く、専用スタジアムが多い欧米に比べ後れを取っているとの指摘がある。

 森氏は19年ラグビーW杯日本大会、20年東京五輪・パラリンピックが、新たな日本のスポーツ施設整備のきっかけとなるとし「良いスタジアムを造るか、良い陸上専用を造るか。それが(今後の)日本の体育施設への投資のあり方だ」と述べ、併用スタジアムの整備は避けるべきとの考えを示した。

 ただし陸上競技では「2、3万人の集客は難しい」と語り、前日本陸上連盟会長・河野洋平氏の「それだけ人を集めるのは陸上では難しい」との談話も紹介した。新国立は五輪時に約6万8000人、大会後はトラック部分を観客席とし約8万人を収容できる計画。

 現在、スポーツ庁で後利用計画について検討しているが20年東京大会後は、都心のど真ん中にある新国立を球技専用とする方向で検討している。一方で、陸上界にも配慮し、味の素スタジアム(調布市)や駒沢陸上競技場(世田谷区)を軸に、世界選手権などの国際大会が開けるように整備する方向で、東京都と調整に入る予定。

 IOCエグゼクティブディレクターのクリストフ・デュビ氏は「五輪時のまま、その通りの形で残すよう強要することはない。必要性によるレガシーモードへの変更はあるだろう。陸上競技の促進は東京及び、全国でどう担保するか。必ずしも国立競技場でやるべきというわけではない」とIOCとしての考えを述べた。

 森氏は、五輪に向けたスタジアムの新設を批判する声について「五輪やサッカー、ラグビーW杯があり、関心を持ってくれるから、すばらしいスポーツ施設が充実していく。それが若者のスポーツに対する憧れを生む役割を担っていると思う」と締めた。