公式戦29連勝の新記録を樹立した最年少プロ、藤井聡太四段(15)が24日、大阪市の関西将棋会館で指された8大タイトル戦の棋聖戦1次予選で2連勝し、羽生善治棋聖(46)への挑戦を目指してスタートを切った。1局目に15歳初白星を挙げると、2局目も圧勝。通算成績を33勝2敗とした。プロになって初めての夏休みは「強くなるために有効に活用したい」と一段の成長を誓った。

 15歳の夏が始まった。来夏に羽生と5番勝負を戦う挑戦者を決めるトーナメントの初戦。西川慶二七段(55)との対局は、藤井が序盤から攻め込んだ。終盤に劣勢に立たされそうになっても、冷静に立て直した。最後はせめぎ合いを制し、15歳初勝利を挙げた。

 「21日は敗れてしまったので、今日は勝つことができてほっとしています」。21日に新鋭の三枚堂四段に敗れ、公式戦2敗目を喫した。中2日。敗戦を糧に勝負に臨んだ。2局目では阪口悟五段(38)に「完敗でした」と言わせるほどの鋭い攻めで連勝を飾った。

 これで憧れの羽生への挑戦権の1歩を踏み出した。棋聖戦は羽生が10期連続で保持しているタイトル。挑戦するためには1次予選、2次予選、決勝トーナメントの計10連勝が必要となる。勝ち続ければ激突することも可能だ。

 「もっと強くなりたい」。プロになって初めての夏休みの過ごし方は、もう決めている。「夏休みは時間的にかなり余裕ができるので、強くなる機会だと思っています。有効に活用して頑張りたい」。課題も見つけている。「読みの精度、形勢判断の精度がまだ足りないと思うので、そこを克服したい」。将棋以外に夏休み中にやりたいことを質問されても「いまは強くなることが最優先かなと思っています。そちらに集中したい」。ゲーム機は持っておらず、テレビも好きなドキュメンタリー番組か大相撲以外はほとんど見ない。将棋と同様に夏休みの過ごし方にもブレがない。

 高校受験を控える中学3年生には勝負の夏となる。学業との両立が話題になるが、将棋に専念するために受験のない名古屋大教育学部付属中学を選んだ。

 師匠の杉本昌隆七段(48)は言う。「その場の1回の勝ちでは喜んだりはしない。先を見据えてやっている」。タイトル獲得の最年少記録は屋敷伸之九段の18歳6カ月(1990年度の棋聖)。「タイトルはもちろん本人も目標にしているでしょうが、これは彼に与えられた使命だと思います。何歳でタイトルをとるのかは分かりませんが、持っている才能からすれば、とらなければおかしい」。

 もっと強く-。15歳の願いのその先に、羽生との夢のタイトル戦が待っている。【松浦隆司】

 ◆棋聖戦 将棋の8大タイトル(ほかは名人・竜王・叡王・王位・王座・棋王・王将)戦の1つ。タイトル戦は、1日制の5番勝負。6月から8月に開催される。前期の88期まで羽生善治が10連覇中。第1期は1962年(昭37)度に開催。翌年度の第2期から94年度の第65期までは、前後2期制で開催。95年度から1期制に。

<藤井の今後>

 ▼27日 銀河戦=平藤真吾七段(関西将棋会館)

 ▼8月4日 王将戦予選=菅井竜也七段(関西将棋会館)

 ▼10日 順位戦C級2組=高見泰地五段(東京将棋会館)

◆藤井四段、棋聖戦への道のり

 1次予選(通過8人)1、2回戦を連勝した藤井は、次の準決勝(竹内雄悟四段戦)に勝てば2次予選(通過9人)進出。ここで2勝すれば、16人による決勝トーナメント入りする。このうち前期ベスト4の斎藤慎太郎七段、糸谷哲郎八段、郷田真隆九段、佐藤康光九段と、現在のタイトル保持者である佐藤天彦名人、渡辺明竜王、久保利明王将の7人がシードとして待ち受ける。ここで4勝すると、羽生棋聖への挑戦権を獲得。棋聖戦登場まであと8連勝が必要となる。