安倍晋三首相は24日、衆院予算委員会の閉会中審査で、加計学園による獣医学部新設の計画を把握したのは、学園の国家戦略特区の申請が認められた1月20日だと主張した。学園の加計孝太郎理事長とは「腹心の友」と公言するだけに、野党は「あり得ない」と猛反発した。首相は、通常国会とは別人のように強気な答弁を封印。地方選挙での連敗や支持率急落への危機感か、「守り」の姿勢に苦しさもにじんだ。ただ、議論は平行線のまま。「加計氏を国会に呼ぶしかない」との声も聞かれた。

 「李下(りか)に冠を正さず」。首相は、「人に疑われるような行動は避けるべき」の意味を持つ言葉を何度も使い、誠実にアピールした。通常国会では野党のヤジにまで応戦し、「印象操作だ」と強い口調で反論したが、この日は冷静なトーンで、早口も封印。獣医学部新設計画で、加計側の働き掛けはなく、便宜も図っていないと訴えた。

 学園の加計孝太郎理事長は、学生時代からの友人。「腹心の友」と呼ぶ関係が、獣医学部設置計画に「首相のご意向」として影響したとの疑念を生む要因になっている。首相は、学園との「公平な関係」を強調したいのか、今年1月の認定まで計画を把握していなかったと答弁。「知りうる立場にはあったが、具体的な説明はない」と述べた。

 民進党は「えー」と大声でヤジったが、首相は反応しなかった。「諮問会議には総理も出席している。にわかには信じ難い」「第2次安倍政権で(学園は特区に)5回も申請している」との指摘にも、「説明は受けていない」と主張。首相への質問で山本幸三地方創生担当相が答弁に立つと、審議は大荒れになった。

 首相動静によると、首相は第2次政権発足後、加計氏と14回、会食やゴルフで接触。計画が大きく動いたとされる昨年だけで7回に上る。「私の友人が関わること。疑念の目が向けられるのはもっとも」と述べたが、働きかけは否定した。「丁寧に説明する」の姿勢は示したものの、納得できる答弁は少なかった。

 民進党の玉木雄一郎議員は、「知ったのは1月20日」発言が虚偽なら責任を取るかと迫ったが、首相は「軽々に職をかけると言うべきではない」との批判を理由に、明言を避けた。

 今年2月、森友問題では「関係していたら首相も国会議員も辞める」とたんかを切ったが、態度は一変。当時は「安倍1強」だったが、今や内閣支持率は急落。東京&仙台の地方選でも連敗した。「私の答弁姿勢への批判もあると思う。率直に認めないと」。国民の心が離れた原因を問われ、首相はとつとつと語った。

 計画の白紙化を進言されたが、プロセスを踏んだ結論として「考えていない」と否定。それでも疑念は消えず、「すべての経緯を知る」(野党議員)加計氏の国会招致を求める声が、強まっている。【中山知子】