元秘書の男性への暴言、暴行が問題となり、自民党に離党届を提出した豊田真由子衆院議員(42)の政策秘書に、青森県板柳町の松森俊逸(しゅんいつ)町議(61)が就任し9日、板柳町で会見した。「(豊田氏への)誤報が多く、僕みたいに対応できる人材が必要だ」と話したが、地元では町議との兼業に疑問の声も上がる。一方、豊田氏は騒動後は雲隠れ状態。選挙区(衆院埼玉4区)ではポスターが減っているが、支援者の間では、出直し選挙へ向けた準備が進んでいる。

 6月22日の「このハゲーー」報道から1カ月半。豊田氏の周辺が出直しへ向けた動きを見せ始めた。埼玉県新座市の地元事務所から560キロ離れた板柳町で会見した新政策秘書の松森氏は「豊田氏への誤解を解きたい」として、6月30日付で就任した。公設秘書の1つである政策秘書は国会議員秘書を10年以上務めるなどの要件があるが、過去に17年間の秘書経験があるという。

 松森氏は、就任の経緯として「(妻から)大変だからパパ助けてよ」と言われたと説明。松森氏の妻(60)は、豊田氏が「女性秘書1人だけしか信用できない」と深い信頼を置いている公設第1秘書。松森氏は政策秘書だが、今後の仕事について「はがされたポスターを張り直す。豊田事務所からの発信も必要だ」と話した。豊田氏とは会っていないが「入院加療中と聞いている」とした。ちなみに、松森氏の髪の毛はふさふさのようだ。

 衆院事務局によると、国費で給与が支払われる政策秘書は兼職が原則禁止だが、議員が許可すれば認められるという。ただ、板柳町議会は年間に3、6、9、12月の4回の議会が行われる。国会の会期と重複するが松森氏は「町議との兼職は法的にも道義的にも問題ない。(中央での)秘書の仕事は町議にも有益」と主張。だが、地元では町議の仕事がおろそかになるとの声が上がり、町議会は15日に議員全員による全員協議会を開き、対応を検討する。

 豊田氏をめぐっては、被害を訴えた元秘書の男性が埼玉県警に被害届を提出。豊田氏の離党届については自民党本部が処分の結論を出していない。自民党埼玉県連も「党本部の結論が出なければ、次の埼玉4区の支部長も選べない」としている。

 豊田氏の選挙区の和光、朝霞、新座、志木の4市では、豊田氏のピンク色のポスターが次々となくなっている。しかし、すでに松森氏の妻が、おわびの名刺を持って回っているといい、地元支援者は「豊田氏はとにかく、どぶ板で支援者を必死に回った代議士。支援者の多くは見捨てていない。公認は難しいが、4市の支援者幹部も次(の選挙)もやると言っている」と明かした。本人の支援者へのおわびとあいさつ回りの準備も徐々に進められているという。

 ◆政策秘書 国会議員の政策立案、立法活動を専門的な立場からサポートすることが主な職務。94年1月に導入され、位置づけは「特別職国家公務員」となる。毎年行われる資格試験に合格するほか、司法試験や公認会計士、国家公務員1種などの国家試験合格者、博士号取得者、公設秘書経験10年以上などの要件を満たせば、「選考採用審査認定」を経て、資格が与えられる。給与は、月額43万3680円(17年4月現在)と諸手当。

 ◆豊田議員の暴言騒動 6月22日発売の「週刊新潮」が、豊田氏が5月、運転中の政策秘書(当時)の50代男性を、後部座席から「このハゲ!」「ばかかおまえは!?」などと罵声を浴びせ、頭や顔などを数回殴り、けがを負わせたと報道。豊田氏は同22日に離党届を提出。事務所は翌23日、「本人は入院中。(今後)何らかのコメントを発表したい」とした。罵倒する音声がテレビで何度も流れ、自民党の都議選敗北の一因とされた。男性は退職し、被害届を7月6日付で警察に提出し受理された。