今月1日から行方不明になっていた岡山県玉野市の渋川動物公園のアルダブラゾウガメ「アブー」(メス、推定30歳)が16日午後、岡山市から捜しに訪れた親子に発見された。全く消息がつかめず、渋川動物公園は15日、発見・保護した人に50万円の賞金を払うと発表。県内外から数十人のカメハンターが集まる騒動になっていた。アブーは元気で早速、好物のナシを6個平らげた。

 体長約1メートル、体重55キロのアブーは園から直線距離で150メートルほどの茂みの中にいた。飼育員の村瀬竜旭さん(29)によると、雨に打たれ、葉でブラッシングされて砂ぼこりが落ち、きれいになっていたという。けがもなく、体重は失踪前と同じ。元気にナシ6個とスイカを平らげた。

 発見したのは、園が発見者に懸賞金を用意したのを知って岡山市から捜しに来た会社員東内誠一さん(39)と中学3年の晟さん(15)。捜索を始めて15分。「おった!」と声を上げ、晟さんが走って園に知らせた。この日はアブー捜索のため、20人近い人が遠くは大阪や徳島から集まっていた。

 06年4月から飼育されているアブーは全速力でも時速1キロ。おとなしく、危害を加えることもないことから開園時間中は園内で放し飼いにされていた。1日午前11時半ごろ、園内に姿が見えないことが分かり、防犯カメラの映像を確認したところ、午前8時45分ごろに入園ゲートから外に出る様子が写っていた。

 職員9人が連日捜索していたが、ふんや爪痕も見つからず、宮本純男園長(79)は「これだけ大きなものがこれだけ捜してもおらん。車で持ち去られ、ドライブに出たのかもしれん」と、情報提供を求めて懸賞金を出すことを決め、15日に発表したばかりだった。村瀬さんによると、発見された場所は8、9日、職員が捜索したところだった。「山の中をグルグル回っていたのかもしれません」(村瀬さん)。

 アルダブラゾウガメはインド洋のアルダブラ環礁が原産で、寒さには弱いが、暑さは平気。水やエサがなくても冬場なら半年、夏でも1、2カ月は大丈夫だという。アブーは放浪好きなのか、7月21日にも園を“脱走”。園から150メートル離れた市道を歩いているところを発見されている。

 ◆渋川動物公園 1989年(平元)3月、岡山県玉野市渋川に開園。約80種600頭羽を飼育。「動物のありのままの姿に会える」をコンセプトに、犬の散歩体験や乗馬体験など自然の中で動物とのふれあいが楽しめる。中でも園内で放し飼いされ、硬い甲羅などを気軽に触れるアブーは同園の看板動物。入園料は大人1000円、小中学生700円、2歳以上500円。営業時間は午前9時~午後5時。宮本純男園長。