安倍晋三首相の「9・28衆院解散」決断を受け、連休明けの永田町は19日、一気に選挙モードに突入した。解散前の「小池新党」結成を目指す細野豪志、若狭勝両衆院議員が、東京の25選挙区全てに候補者を擁立する準備に入ったことが分かった。小池百合子都知事のおひざ元で、圧勝した都議選の再来を狙うが、都議選で選挙協力した公明党の支援が、国政でも同様に得られるのか不透明な面も残る。一方、首相は訪米から帰国後の25日に会見し、衆院解散を正式に表明する。

 細野、若狭両氏は来週の新党結成へ、党名や綱領、規約の準備に入った。19日は民進党を除籍された笠浩史、後藤祐一両衆院議員と会い、新党を「非自民、非民進」の受け皿とすることで一致。元民進や無所属の現職らが参加すれば、10人規模となる可能性もある。

 新党は衆院選で小池氏の応援を受ける。関係者によると、今も根強い小池人気を踏まえ、全25選挙区に候補者を擁立する方針だ。人材供給源は、若狭氏が16日に立ち上げ、約200人が参加した政治塾「照輝塾」が中心。塾生には元国会議員5人以上、地方議員が約10人いる。また塾生は女性が4割を超えており、女性候補の選抜も意識する。

 東京は無党派層も多く、都知事選、都議選を勝利した小池氏と連動して戦えば、現在自民の現職が8割を超える東京で、新党の議席獲得も視野に入るとの期待がある。自民党は都議選の惨敗で新たな都連会長人事も決まらず、組織が混乱している背景もあるようだ。

 ただ、懸念はある。小池氏が率いた「都民ファーストの会」の都議選圧勝は、都政で連携する公明党との選挙協力も大きな要因だが、公明は国政で、自民と連立政権を組んでいる。

 同党の斉藤鉄夫選対委員長は19日のBSフジ番組で、「国政は自公が基本」と明言。小池新党が、都議選と同じ協力態勢が望めるかどうかは、まだ不透明だ。自公選挙協力の象徴で、公明重鎮の太田昭宏前国交相の地盤、12区にも擁立するかという課題もある。東京で戦いの担い手となる都民ファの都議は大半が新人で、組織力は盤石ではない。

 細野氏らは東京以外も含めて100人規模の擁立が視野にあるとみられるが、新人が中心のため、資金的な支援も必要になる。供託金は小選挙区で300万円、比例重複で600万円。選挙資金も調達しなくてはならない。与党内では、都議選で成功した「小池頼み」の戦いも、国政では限界があるとの見方もある。

 ◆東京の小選挙区 1区から25区のうち、前回14年衆院選では、自民が22議席を獲得。旧民主が1、旧維新の党が1(現在は民進)、公明が1議席をそれぞれ獲得した。一方「1票の格差」解消に伴う区割り改正法成立で、19都道府県97選挙区で区割りが変更し、東京でも9、15、18、20の4つをのぞく21選挙区が対象になった。従来の選挙区地域が別の区に組み込まれたり、新たな地域が入ったり、支援者の居住地域が選挙区から抜けるなど、各候補者の選挙戦への影響も指摘されている。