漫画家・秋本治氏(64)が16日、都内で行われた集英社の2017新刊発表会で「見たか、ハリウッド! ハリウッドに漫画で対抗する!」と野望を語った。

 秋本氏は、1976年(昭51)に「週刊少年ジャンプ」で連載を始めた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(「こち亀」)が、16年9月17日発売の同誌で最終回を迎え、40年の歴史にピリオドを打った。その後、同社の4誌で新連載をスタートした。

 月2回刊行の青年漫画誌「グランドジャンプ」で連載の「BLACK TIGER ブラックティガー」は、秋本氏が「こち亀」以前に描いていた劇画に原点回帰し、当時から構想していた西部劇をテーマに描いた。秋本氏は、漫画でもなく映画でもない「シネ漫画」という新ジャンルに挑戦していると強調した。

 秋本氏 「シネ漫画」という名前をつけて、1話60ページくらいで映画のように読み応えがある作品。11月2日発売のコミックス第1巻には3本(お話が)入る。映画で言うと、3本立て映画を見たような充実感があると思う。

 18日発売の「グランドジャンプ」22号からは、3号連続で海洋戦を描くという。秋本氏は「ティガーが蒸気船、船艦と戦う。西部劇の映画で今まで、海洋戦は1度もない。ぜひ描いてみたい。漫画的に描いたら絶対に面白いと思った」と胸を張った。そして、ティガーのコスプレをして登場した松田るか(21)に視線を送りつつ「見たか、ハリウッド! ハリウッドに漫画で対抗する」と宣言。松田も「よろしくお願いします」とティガー役での起用を“予約”した

 秋本氏は、「こち亀」終了後「BLACK-」のほか、月刊青年漫画誌「ウルトラジャンプ」に「いいゆだね!」、「週刊ヤングジャンプ」に「ファインダー-京都女学院物語-」、月刊漫画誌「ジャンプSQ」に「Mr.Clice-ミスター・クリス-」と、集英社の4誌で新連載を始めたことが話題となった。

 出版不況が叫ばれる昨今、漫画誌も部数を落としているというニュースが流れ、ウェブ漫画としてインターネット上で連載される作品も少なくない。そうした現状における漫画の可能性について、秋本氏は「可能性は無限」とした上で、次のように語った。

 秋本氏 僕は結構、人の作品も好きで見るんですけど、まだこんな書き方、表現、ジャンルがあったんだと見るたびに新鮮で、すごいなと驚かされる。ウェブになったから、漫画は紙のものじゃないのか…ということはないと思う。ウェブやウェブで、それで読みやすいという人もいるし、どこでも、旅行先でも読める。それと違って、本を買って家に帰って読む作業が好きな人もいる。「BLACK-」に関しては、今後の漫画の流れを変える一端じゃないですけど、昔の西部劇を今風に直して映画のようにして、女性をガンマンにしたのがテーマ。ページを見開く時のすごさ、1ページ、1ページ開く時の驚きを表現している。紙媒体で読んで欲しい。

 9月16日発売の「週刊少年ジャンプ」で復活した「こち亀」の“再復活”については「本当に(主人公の)両さんに聞かなきゃ分かんない」と言い、笑った。【村上幸将】