若手弁護士とのダブル不倫疑惑で民進党を離党し、愛知7区から無所属で出馬した山尾志桜里氏(43)が自民前職、鈴木淳司氏(59)の一騎打ちを制した。スキャンダルを抱えたまま選挙戦に挑んだ山尾氏は「等身大の自分を見てほしい」と「どぶ板選挙」を徹底した。街頭では痛烈なヤジが飛ぶ場面もあった。国政選挙4度目で、初の無所属。比例復活はないワンチャンスをモノにした。

 深夜0時を過ぎても、当選確実が出ない。愛知県長久手市にある山尾氏の選挙事務所。支援者らが開票速報を見守った。開票率が95%を超えても鈴木氏にわずか約800票差のリードという大激戦。「じりじりする」と男性がつぶやく。午前1時40分、ようやくNHKの当選確実を受けてスーツ姿で現れた山尾氏は「1票を投じてくれた、地元のみなさんのおかげです」と笑顔を見せた。

 スキャンダルを抱えたまま選挙戦に挑んだ。9月初旬に週刊文春に疑惑が報じられ、内定していた党幹事長への起用が見送られた。疑惑報道は民進党を直撃し、安倍首相に解散を決断させた要因の1つともいわれた。

 地元有権者への説明では、男女関係を何度も否定し、騒動を起こしたことに頭を下げ続けた。演説中にヤジが飛び、握手を拒絶する主婦もいた。飲食店では男性客から「きしめんを食べに来たのに(あなたに会って)まずくなった」と言われた。それでも「等身大の自分を見てほしい」と有権者に握手を求め「『国会に戻して良かった』と思ってもらえる仕事をすると約束する」と訴えた。

 昨年、ブログの「保育園落ちた日本死ね」の言葉を国会で取り上げ、待機児童問題の追及で注目された。私生活上の問題解決を政治テーマにしてきただけに有権者から「自分の私生活には甘いのでは」と批判もあった。

 今回は国政選挙4度目で、初の無所属。比例復活はなく、小選挙区で勝ち上がることが唯一の道だった。選挙期間中、山尾氏と握手した2歳の長男がいる主婦(30)は「疑惑は拭えないけど、もう1度だけ信じてみてもいいかも」と話した。そうした声に支えられ、山尾氏が再出発する。【松浦隆司】

 ◆山尾志桜里(やまお・しおり)1974年(昭49)7月24日、宮城県生まれ。東大法学部卒。02年に司法試験に合格、東京、千葉両地検などに着任。09年衆院選で初当選。12年衆院選で落選も、14年衆院選で再び当選。小学4年の時にミュージカル「アニー」の初代アニー役を務めた。家族は夫(IT企業社長)との間に1男。