全国の自治体、企業キャラクター1158体の頂点を決める「ゆるキャラグランプリ2017」の結果発表が19日、三重・桑名市で行われ、千葉・成田市の「うなりくん」が80万5328票で、ご当地部門681体の頂点に立った。成田空港の飛行機と名物のウナギを合体。羽田空港が再国際化した危機感などから観光戦略に力を入れ、10年に誕生した。20年東京五輪もあり、昨年の訪日外国人は2400万人超と過去最高を更新するなど、日本の玄関が注目されていた中での優勝となった。

 ジェットエンジンがついた両手を大きく広げ、「うなりくん」は今にも大空へ飛び立つように、初優勝の喜びを前面に出した。成田市の関根賢次副市長は「千葉から遠く離れた『アウェー』で優勝でき驚いている。涙が出そうだ」と感極まった。初回だった10年大会で8位(携帯投票)を獲得後、毎年出場したが16~31位と振るわなかった。しかし、7年間の助走を生かし、昨年の22位から一気に「ゆるキャラの高み」へテークオフした。

 ウナギと飛行機の共通点、「流線形」のフォルムを生かしたキャラ。しっぽには尾翼がつき腹部分には「成田」と書かれている。初詣の参拝者数で全国トップ3に入る成田山新勝寺の参道には、多くのウナギ店が軒を連ねる。正月はかば焼きの煙で参道が埋め尽くされるほどの名物だ。

 「うなりくん」の誕生は、羽田空港が再国際化した10年。都心からの距離では分が悪く、利用客減の危機感から同市は「ブランド構築事業」を開始した。

 同市役所の女性職員で組んだ「成田ソラガール」、官民の若手らで組織した「成田空援隊」がメディア取材を受けPRに奮闘。映画、ドラマ、バラエティー番組、CMなどの撮影も積極的に誘致。自治体主導でエキストラ登録者数も増やした。地元食材を生かした「成田ソラあんぱん」も販売し、米ロサンゼルスでもPRするなど、ブランド構築、発信に注力した。

 10年には「年間発着枠30万回」を地元合意し、千葉県とともに成田空港の地域活性化策の検討を続けてきた。15年には第3ターミナルの運用を始め、格安航空会社(LCC)の増加に対応。16年度は航空機発着回数が5年連続、国際線発着回数が2年連続で最高値を更新。航空旅客者数も2年連続で過去最高となり初めて3900万人を超えるなど、成果を出してきた。

 東京一極集中が指摘される昨今、羽田に負けじと、自ら立ち上がり新施策を講じてきた成田。「うなりくん」の優勝は、その地道な取り組みの象徴となった。

 ◆成田市 1954年(昭29)に市制施行。小泉一成市長(3期)。人口13万3061人(先月末現在)。940年(天慶3)、平将門の乱の平定を祈願し、開山した成田山が有名。1978年(昭53)に成田空港が開港したが、それまで「成田闘争」と呼ばれる激しい反対運動があった。2015年、政府の国家戦略特区に指定され、国際医療福祉大が医学部を新設する案が決定し、今年4月に開学した。名物は、ようかんなどの和菓子、落花生やサツマイモ。