安倍晋三首相は13日、将棋界史上初の「永世7冠」を達成した羽生善治(47)と、囲碁で初めて7冠独占を2度果たした井山裕太(28)に、国民栄誉賞を授与するため、検討を始めるよう指示した。実現すれば、将棋界、囲碁界初の快挙。いずれも前人未到の偉業が高く評価された。授与式は、年明けの予定だ。

 羽生はこの日午前、都内の日本記者クラブで会見した。先週から予定されていた会見で、たまたま国民栄誉賞のニュースと重なった。政府が国民栄誉賞を授与する方向で検討していることを受け、羽生は「検討していただけるだけでも名誉なこと。将棋が幅広い人に楽しんでもらえるものであり続けられるよう、これからも頑張っていかなければならない」と決意を語った。妻で元女優の理恵夫人も驚いた様子だったという。

 会見の中で、後進の育成について尋ねられると、「強い若手がいっぱいいるので、育成しなくてもいい」と笑いを誘った。15歳の最年少プロ、藤井聡太四段のことも、「私が知らない言葉を知っている(笑い)。どれだけ成長するか関心を持っている」と評した。AI(人工知能)と今の将棋については、「過去に人間が指した手がAIに見直されている。温故知新で、クラシックな手が復活している」との分析を披露していた。

◆永世 えいせい。7つそれぞれの将棋タイトル戦(名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖・竜王)で、複数期または連続期、勝利することで得られる称号。獲得すれば、引退後などに名乗ることができる。過去に永世を獲得したのは10人。羽生以前の最多は、故大山康晴15世名人と中原誠16世名人が達成した永世5冠。