大阪府寝屋川市の住宅のプレハブに柿元愛里さん(33)が監禁されて凍死した事件は、府警が死体遺棄容疑で両親を先月23日に逮捕してから3週間が過ぎた。わずか約2畳の部屋に15年以上閉じ込め、モニターで常時監視していたという異様な事件。愛里さんは01年ごろ統合失調症と診断され、父親の泰孝容疑者(55)が隔離。行政からの支援は受けず、近所付き合いもせず、一家は孤立を深めていった。家主からは立ち退きを迫られていた。

 寒さが厳しさを増した14日朝、愛里さんの自宅前の路上には線香や花束、カイロ、お菓子などが供えられていた。愛里さんが凍死したのは昨年12月18日、氷点下2・7度の最低気温を記録した、寝屋川市の自宅のプレハブだった。身長145センチに対して体重はわずか19キロ。極度にやせて低栄養の状態だった。

 道路に面した自宅の玄関は赤色の厚い鉄製の扉で閉ざされ、表札や柱に外に向けた約10台のカメラが設置されている。監禁が発覚しないよう周囲を警戒していたとみられる。近所の女性(72)は「監視カメラが多くて不気味だった。ただ、人の出入りを見たことがなかったので、だれも住んでいないと思っていた」と話した。

 カメラは愛里さんにも向けられていた。泰孝容疑者(55)と母親の由加里容疑者(53)はプレハブ内に設置した監視カメラの映像を居間のモニターに映し出し生活を管理。広さは2畳。冷房機器はあったが、暖房がなく、冬は過酷な寒さだったとみられる。簡易トイレや外付けの給水タンクとつながったチューブがあり、生活が完結する造りだった。

 寝屋川市には愛里さんの障害者手帳の申請はなく、行政の支援を受けていなかった。近隣住民は「自治会からも抜け、あの場所に一家が暮らしていることを知る人もわずかだった」。一家は孤立していた。近所に住む60代の男性は言う。「地域一帯は家主から立ち退きを求められていた。数年前に周辺の住民ら全員が退去したが、柿元さんだけが応じなかった」。府警は監禁致死容疑などのほか、殺意があった可能性も視野に捜査している。

 小学校の文集の寄せ書きにはこう書いてあった。

 「マンガ家になりたい 柿元愛里」

 約20年後、少女が発見されたとき、ほぼ骨と皮だけになっていた。【松浦隆司】