「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。
14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。
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<質問>
名のある大企業の輸送・貨物会社で、世界を相手にした物流を手掛けたいと思って就職活動をしています。今のところ、中小運送会社の総合職に内定はもらいました。ここ1社だけですが、どうしても名のある大企業に就職したいので断るべきでしょうか?(22歳 男子大学4年生 東京都)
<回答>
このような世の中ですから、安定していると思われる大企業への就職を、夢見る人は多いでしょう。ですが、人間は「縁」でつながれています。内定をもらっている会社に縁を感じて働いてみてはいかがでしょうか。
第1志望の会社には、今から入社試験を受けて数々の難関をクリアしなければいけませんよね。状況は難しいと思います。
その点、あなたが内定しているところは、「働いてください」と迎える状態にあります。確実なカードです。えり好みしないで、誠実に勤めて、目の前にある仕事を勤勉にこなしなさい。仮に中小だとしても、生きがいが持てるかもしれません。
「どうすれば会社が発展する」とか「業績が伸びるのか」を考えてみましょう。そんな意欲のある社員が増えれば、中小といっても優良企業になるかもしれません。
「鶏口牛後(大勢の中でずっと下の方にいるより、小さな仲間の中でも中心人物になれという意味)」という言葉があります。日本には町工場から、世界にその名前をとどろかせるほどまで発展した会社がいっぱい存在しているではありませんか。逆に、かつての栄光はどこに行ってしまったのかと思えるほどに業績が傾いてしまった、名のある会社だってあります。
人間、仕事は大事です。仕事を通して発展に寄与し、社会に貢献します。そして、何よりも仕事があるから生活ができるのです。それを忘れてはいけません。
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