23日午前9時59分ごろ、草津白根山の本白根山(群馬県草津町、2171メートル)が噴火した。県災害対策本部などによると、麓にある草津国際スキー場で、噴石などによって1人が死亡し、11人が重軽傷を負った。草津白根山で噴火が確認されるのは1983年以来。

 「ドーン」。東京都江東区の主婦浜島貝さん(52)は、山頂近くでリフト待ちをしていた時に大きな音を聞いた。左を見ると、山から黒い噴煙が上がっていた。煙にまじって大きな石が飛んでいるのも見えた。「(14年の)御嶽山の噴火のニュースと同じだ」。親族らに「とにかく逃げよう」と声をかけた。

 時を置かず「ドーン、ドーン、ドーン」と、空から黒いものが落ちてきて、ゲレンデに深く突き刺さった。「噴石でした。小さなものから50センチくらいのものもあった」。屋根があるゴンドラの駅に逃げる時にも「2~3メートル後ろにドーン、ドーンと噴石が落ちてきた」。「当たっちゃうよ」。必死で建物に逃げた。

 群馬県長野原町の桜井修平さん(28)と華菜さん(28)夫妻は兄と3人でスキーに来ていた。山頂近くの6人乗りゴンドラの中にいた。左から「ドドン」という音がして黒い煙が見えた。「変だな」と思っていると、バチバチッとゴンドラの窓に何かが当たり始めた。細かい噴石だった。ゴンドラは、大きく揺れた後にストップ。「ゴンドラが落ちるんじゃないか」と思うくらい激しい揺れだった。下の雪面までは20~30メートル。「飛び降りるには高すぎた」。噴石が当たる音は、3分ほど続いた。すぐ後ろのゴンドラは窓が割れていた。

 110番で状況を通報し「助けてください」と救助要請した。「死も覚悟した」と修平さん。華菜さんは「怖いとか考える余裕はありませんでした」。約20分後、ゴンドラが動き、山頂近くのレストハウスに避難。「別のゴンドラに乗っていた方は、ガラスを突き破った噴石が顔に当たり、血だらけになっていました」。レストハウスには小学校低学年の子どももいた。

 午後3時過ぎ、負傷者から順に、自衛隊のヘリや、スノーモービルでの救助が始まった。夫妻が下山できたのは午後4時半ごろ。修平さんは「山の怖さを知った。夢にも出てくると思う」と疲れた様子で話した。【清水優、太田皐介】