約3万6000人が参加した東京マラソンが行われた25日、折り返し地点にある富岡八幡宮では、同神社御輿(みこし)総代連合会の氏子ら約300人が2基の御輿を担ぎ、ランナーにパワーを送った。昨年12月の宮司殺害事件後、町御輿が担がれたのは初めて。

 事件の影響で参拝客が激減した富岡八幡宮が、活気に包まれた。午前11時ごろ、2基の御輿が登場。太鼓のリズムに合わせ、担ぎ手が「わっしょい! わっしょい!」「頑張れ~!」と威勢の良い声を出す。盛り上がりに気付き、立ち止まって写真撮影をするランナーもいた。

 神社前で友人の応援をしていた相模原市の阿久津博さん(68)は「友人が無事に完走できるようお参りした。御輿の盛り上がりもすごかった」と目を細めた。

 江戸3大祭りの1つ、深川八幡祭りの中心となる連合会では、東京マラソン開催当初から有明のゴール地点で御輿を担ぎランナーを迎えていた。昨年からはコース変更で神社が折り返し地点のすぐ近くになったため、コース沿いでランナーを応援している。

 ただ事件直後ということもあり、今年初めまでは総代の会議でも「参加を見送るべき」という意見も出ていたという。同地で御輿を担いで40年の幹事総代の男性(70)は「反対意見もあったが、まつりごとと事件は別。『活気を取り戻すためにもやろう』となった」と話した。

 八幡宮関係者は「このような盛り上がりは大変ありがたい。これから、1歩1歩というところです」と語った。8月の深川八幡祭りでは、通常通り神社の宮御輿が使用されることも決定。一時は足が遠のいた参拝客、観光客も徐々に戻ってきているという。凄惨な事件から約2カ月半、氏子らは一丸となって八幡宮“再興”を目指している。【太田皐介】

 ◆富岡八幡宮の宮司殺害事件 昨年12月7日午後8時25分ごろ、富岡八幡宮(東京都江東区)の敷地内などで起こった事件。宮司の富岡長子さんが、弟の元宮司茂永容疑者に日本刀で切りつけられ、殺害されたとされる。運転手の男性も、付近の路上で茂永容疑者の妻、真里子容疑者に切りつけられ重傷。その後、茂永容疑者は真里子容疑者を殺害し、自殺した。事件の影響を受け、正月三が日の初詣客は3割減となった。