財務省による森友学園文書改ざん問題で、安倍晋三首相が改ざんの可能性を今月6日に把握していたことが15日、分かった。内容の相違に気付いた国土交通省から文書の提出を受けたが、官邸は財務省の最終確認を踏まえる必要があったとしている。説明が後手に回ったのは否めず、野党は「官邸を挙げた隠蔽(いんぺい)」と批判を始めた。改ざん前文書にある昭恵夫人の発言を否定した首相答弁も、野党による夫人の国会招致要求の勢いを加速。墓穴を掘った形になった。

 首相官邸が、財務省による改ざんの可能性を事前に把握しながら、積極的な情報開示を避けたことが分かった。官邸の姿勢が問われる事態になっている。

 官邸が改ざんの可能性を把握したのは、国交省が保管していた決裁文書がきっかけ。昨年国会議員に開示された内容と異なる部分があるとして、杉田和博官房副長官に報告された。改ざん前の文書で、菅義偉官房長官も6日に把握した。

 菅氏は15日の会見で、情報公表が遅れた背景について、検察当局から改ざん前の文書を入手して確認する必要があったと説明。文書入手は10日で、「(それまで)確認できる状況ではなかった」「可能性がある、ということだった」と釈明した。官邸の対応は「問題ない」と強調したが、これまでの定例会見でも国交省の報告には触れていない。

 首相への報告も6日。首相も14日の参院予算委員会で、改ざんの報告を「11日に受けた」と述べたが、可能性を把握していた事実には触れていない。野党は「政権ぐるみの隠蔽だ」と反発している。

 一方野党は、ある首相答弁を新たなターゲットに定めた。改ざん前の文書に、籠池泰典前理事長の言葉として、首相の昭恵夫人が「いい土地ですから、前に進めてください」と語ったとの記述があるが首相は14日、「妻に確認したら、そのような発言はしていない」と、真っ向から否定した。

 ではなぜ、改ざん前文書に記述があるのか。野党はヒアリングで、「財務省があやふやな内容を決裁文書に書くとは思えない」と指摘。富山一成・理財局次長は、「書いた職員も夫人が本当に言ったかは分からない」と釈明したが、改ざん後にこの言葉を含めて夫人の記述が消えたのは確かだ。野党側は「夫人がうそをついているか、決裁前の文書がうそなのか。(籠池氏は勾留中なので)夫人に聞かなければ分からない」と指摘。夫人の証人喚問はなおさら必要と、結論づけた。

 佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問は、早ければ来週後半にも実現の見通しだが、首相の責任に直結する夫人の国会招致を、与党は拒否する方針。しかし首相の断定調の答弁が、野党に追及の機会を与える皮肉を招いた。野党は今日16日に国会審議に復帰し、委員会の場で首相や麻生氏を追及する。

 <首相がいつ改ざん知った? 文書めぐる3月の主な動き>

 ▼2日 朝日新聞が改ざんの疑いを報道。

 ▼5日 国交省が、財務省による文書改ざんの可能性に気付き、首相官邸に報告。事実関係は公表されず。

 ▼6日 財務省が調査現状を国会に報告もゼロ回答。提出したのは改ざん後の資料。

 ▼同 首相に文書改ざんの可能性が伝えられる。

 ▼7日 近畿財務局職員が、神戸市の自宅で自殺。

 ▼9日 佐川氏が国税庁長官を辞任。

 ▼10日 財務省が文書改ざんの事実認める方針固める。官邸サイドが、改ざん前の文書を入手。

 ▼11日 首相、麻生氏が改ざんの報告を受ける。

 ▼12日 財務省が文書改ざんを正式に公表。