「安倍1強」と言われる中、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省による決裁文書改ざんが発覚した。国会議員に示された公文書が書き換えられる「国会軽視」。安倍政権の地盤をさらに強固にしたのは昨年秋の衆院選、自民圧勝をアシストしたのは野党分裂だった。

 鋭い視点で斬り込むMBSテレビのドキュメンタリーシリーズ「映像’18」。今回は「希望の果てに~分かれ道をゆく政治家たち~」と題したドキュメンタリーを19日深夜0時50分(関西ローカル)から放送する。迷走する野党の中で、京都選出の元民主党の3人の政治家を追い、野党勢力はどうあるべきかを問いかける。

 「なんで希望やねん。違うわ、あんた。オレは絶対に信用せん」。有権者のストレートな声に希望の党の山井和則氏(56)の顔がひきつった。

 昨年秋の総選挙、民進党は分裂した。山井氏が合流した希望の党は「政権交代」を掲げたが、小池百合子代表の「排除」発言をきっかけに足並みの乱れが表面化。野党の分裂を招いて自民党を利する構図を作り、有権者の失望を買った。

 同番組では「京都から日本を変える」を合言葉に新年に和服姿で写真に納まる仲だった京都選出の前原誠司氏(55)、福山哲郎氏(56)、山井和則氏を追った。同じ1962年(昭37)生まれの3人は昨年秋の総選挙では、それぞれが違う道を歩んだ。

 安倍政権打倒という大義のために「名を捨てて実を取る」と、自ら率いる民進党を事実上消滅させ、希望の党への合流を目指した前原氏。小池氏の「排除いたします」発言後、排除リストが出回り、仲間だった枝野氏は立憲民主党を立ち上げた。参議院議員の福山氏は、枝野氏と行動をともにし、立憲民主党の幹事長に就任した。

 6期18年の実績の山井氏は選挙を目前に控え、「希望の党」へ合流した。ところが希望の党は小池氏の「排除」発言後に失速。逆風の中で選挙を戦った。街頭では有権者から厳しい言葉を受けた。小選挙区で自民党の議員に敗れ、比例復活。同番組のインタビューに山井氏は「信頼の回復には10年かかる」と話した。同番組では選挙戦の映像、衆院選後のインタビューを通し、3人の決断の背景、裏側に迫る。

 MBS報道局番組部の斉加尚代ディレクター(53)は番組をつくるきっかけについて「第1野党であった民進党の解党劇は何が起こったのか。メディアにいる私でもあの選挙の中ではよく理解できなかった。いったい事実は何だったのか。民進党解党劇はどういう流れの中で起こったのか。検証したかった」と話す。

 同世代の3人を取り上げたことについて「事実上の解党、希望への合流を決断した前原氏、飛び出していった福山氏。希望への合流の流れに乗ったがためにこれまでにない過酷な選挙を味わった山井氏。この3人の政治家を描くことによって野党のあり方、それぞれの違い、心情。有権者は政治家に何を求めているのか。それが見えてくるのではないかと思った」。

 取材を終えて感じたこともあった。

 「時代とともに野党の役割は変化している。有権者が野党に求める役割も変わっていくことを感じた」

 本来なら国会は議員同士が多様な意見を戦わせ、対話によって結論を導き出していく場であるはず。国会議員に示された公文書が書き換えられる国会軽視の源流はどこにあるのか。野党の役割を通して、本質をたぐっていく。