オウム真理教が地下鉄にサリンをまき、13人が死亡、6000人以上が重軽傷を負った1995年の地下鉄サリン事件から20日で23年となるのを前に、地下鉄サリン事件被害者の会などが17日、都内で集会を行った。営団地下鉄(現東京メトロ)の霞ケ関駅助役だった夫高橋一正さん(当時50)を事件で亡くした高橋シズヱさん(71)は「事件、被害は今も続いている。23年前の事件を、現実として実感していただきたい」と呼びかけた。

 シズヱさんは公安調査庁がこのほど公開した「被害者とそのご家族・御遺族の声」に、一正さんの死体検案書の写真とともに手記を寄せている。事件の8カ月後に受け取った検案書に「有機リン化合物による中毒死」とあったのは、当時も気付いていた。ただ、「他殺」の欄に小さなチェックが入っているのに昨年気付き「いつまでも心を揺さぶられる日々が続いている」としている。

 検案書を公開したことについてシズヱさんは、「被害者の中では、世間では事件は終わっていると思われているんじゃないかという声もある。今も続く現実としてとらえてほしいから」と話した。

 会では、事件後に生まれた世代にあたる、上智大文学部新聞学科水島宏明ゼミの栗原海柚(みゆ)さん(21)津田真由子さん(20)向島桜さん(20)が、被害者の会代表世話人のシズヱさんに取材したドキュメンタリー映像「今日もあなたと一緒に」(https://www.youtube.com/watch?v=R8TmUjOV66Q)が、上映された。3人は事件や被害者のことは詳しく知らなかったというが、昨年の集会に参加して今も被害に苦しむ被害者や、改称して存続する教団の状況を知り、現在も続く問題として取材した。

 同世代では事件のことを知らない学生も多い。向島さんは「ネットで関心がある情報しか取りに行かない時代。関心がない人にも感心を持ってもらいたい」と話した。作品は28日発売の水島ゼミ取材班のルポルタージュ集「想像力欠如社会」(弘文堂)にも掲載されるという。