森友学園をめぐる財務省の文書改ざん問題で、佐川宣寿前国税庁長官(60)に対する証人喚問が27日に行われることが20日、決まった。安倍官邸は難色を示したが、野党だけでなく、国民の批判拡大に危機感を強める与党に押し切られた。野党は佐川喚問後、昭恵夫人らの喚問も求めて二の矢、三の矢を放つ構え。最後の切り札だった「佐川喚問カード」を手放す事態に追い込まれた政府与党に、混乱収束の目算はない。佐川喚問を機に、一気に政局が動きだす可能性もある。

 安倍官邸が「最後のカード」だった佐川氏の証人喚問に追い込まれた。喚問は27日の午前中に参院、午後に衆院で2時間ずつ行われる。参院予算委員会では20日、正式に喚問を議決。衆院も22日に議決する。

 国会での証人喚問は、昨年3月23日、森友学園の理事長を務めた籠池泰典被告以来、1年ぶり。籠池被告はこの時、安倍昭恵夫人から100万円寄付を受けたと主張するなど、「爆弾ネタ」を暴露。あれから1年。森友問題は、学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんへ急展開。財務省が「最終責任者」とする佐川氏の登場は、森友問題の幕引きを急ぎたい安倍政権にとって、皮肉なめぐり合わせといえる。

 官邸は最後まで喚問実施に慎重だった。自民党では二階俊博幹事長が当初から前向きだったが、官邸は参考人招致でとどめたい意向だった。佐川氏は喚問で、刑事訴追の可能性を理由に証言拒否することが予想される。そうなれば、野党が昭恵夫人や夫人付だった谷査恵子氏らの喚問を次々に求めてくるのは「既定路線」(関係者)だからだ。

 官邸はドミノ喚問を警戒するが、最後は「抵抗する理由は全くない」(小泉進次郎筆頭副幹事長)など自民党内の声にも押し切られた。与党側は応じる理由の1つに、国会審議の停滞回避をあげてはいるが、国民が安倍政権に冷たい視線を向けており、内閣支持率も急落。「佐川隠し」は、世論の理解を得られないとの判断もはたらいたようだ。

 喚問では、首相の関与や官僚の忖度(そんたく)の有無、誰が改ざんを指示したかなどが焦点。立憲民主党の辻元清美氏は「今回は第1歩だ」として、早くも夫人らの証人喚問を見据える。与党は拒否する構えだが、抗しきれるのか。永田町では、ひとり責任を押しつけられている佐川氏の「リベンジ」に、期待する声もある。「佐川喚問」が、新たな政局を招く可能性もある。【中山知子】

 ◆証人喚問 憲法62条に基づき、衆参両院が対象者に証人としての出頭や証言、記録提出を求める行為。参考人招致と違い、虚偽の証言をするなどした場合には刑罰の対象になる。証人がうそをつけば3月以上10年以下の懲役、正当な理由なく出頭、宣誓、証言を拒めば1年以下の禁錮または10万円以下の罰金。