安倍晋三首相は24日、地方組織の幹部らを集めた党会合で、森友学園をめぐる財務省の文書改ざん問題について謝罪した。昭恵夫人の問題には触れなかった。来月予定するトランプ米大統領との日米首脳会談の時期を「来週」と述べ、訂正するひと幕も。来週は佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問というヤマ場。外交に逃げたい? はやる気持ちだったのだろうか。

 今日25日の党大会を前に、地方組織幹部が自民党本部に集まる、恒例の全国幹事長会議。首相はあいさつの冒頭で「まずは財務省の決裁文書書き換え問題をめぐり、大変ご心配をおかけしている」と、改ざん問題の謝罪から切り出した。

 「行政に対する信頼を揺るがす事態で、責任の重さを痛感している。行政全体の最終的な責任は、内閣総理大臣の私にある。国民の皆さまに深くおわび申し上げたい」と陳謝した。原因の徹底解明と、財務省の組織立て直しを「約束する」としたが、夫人の問題には触れなかった。

 財務省の決裁文書から、夫人に関する記述がすべて削除された理由が判然とせず、大きな焦点となっている。夫人が前学園理事長の籠池泰典被告に「いい土地ですから、前に進めてください」と述べたとされることは、首相が否定し、籠池被告が野党の接見に認め、意見は食い違ったままだ。

 その後、首相は経済成長のアピールや北朝鮮問題の対応、持論の憲法改正への意欲を語り、あいさつは10分弱で終了。憲法改正では「結党以来の自民党の課題。今の世代で解決し、結果を出したい」と意欲を表明。「結果を出したい」というフレーズを繰り返した。

 改ざん問題が浮上する前は、今秋の自民党総裁選で3選が確実視された首相だが、現状では不透明な情勢とも指摘される。「結果を出すこと」にこだわる姿勢を強調した背景には、焦りも見え隠れした。

 一方、来月に予定する日米首脳会談について、自身のあいさつで「来週」と言及。他幹部のあいさつが終わった後で、「来月です」と訂正するひと幕もあった。来週首相を待ち受けるのは、外交の舞台ではなく、佐川氏の証人喚問という、改ざん問題の1つのヤマ場だ。はやる気持ちの裏返しだったのだろうか。

 首相は幹部のあいさつが終わると退室。地方の声を、聞くことはなかった。来年は、統一地方選と参院選が重なる、12年に1度の選挙イヤー。首相の政権運営が不安定になれば選挙にも影響する。完全な「とばっちり」(関係者)だけに、地方の声は切実で、不満もくすぶる。出席者から「自民党への風当たりは強い」「考えている以上に国民の目は厳しいのではないか」などの厳しい声が、首相不在の部屋に響いた。【中山知子】