財務省の福田淳一事務次官(58)は19日、テレビ朝日が女性記者のセクハラ被害を公表したことに対し、依然として自身によるセクハラを否定した。「全体をみればセクハラに該当しないことは分かるはず」と持論を展開した。しかし、セクハラは事実とするテレ朝はこの日、正式に財務省に抗議した。福田氏の「開き直り」のような対応は、財務省批判を一層強める可能性がある。野党は、麻生太郎財務相の引責辞任は不可避として、その先の倒閣も視野に追及を強めている。
「現状では職責を果たせない」と辞任表明して一夜明けたこの日、福田氏は自宅を出る際、なお自身のセクハラ疑惑を否定した。「相手が話しているところを、とっていない。(やりとりの)全体を見てほしい。全体を見れば、セクハラに該当しないのは分かるはずだ」と主張。「テレ朝がどういう調査をされたか知らないが」とも述べた。
辞任は、セクハラ疑惑が理由ではないとも強調。一方、女性記者に言うことはないかと問われると、無言のまま車に乗り込んだ。
テレ朝は社として、セクハラ発言を含めたやりとりが福田氏と女性記者の間にあったことを確認し、公表した。しかし、福田氏はテレ朝の主張に強気に反論。財務省もこの日の野党ヒアリングで「テレ朝の見解は重く受け止めたい」とした上で、委託する弁護士事務所による調査を続け、記者側の主張を聞きたいとの考えをあらためて示したが、この姿勢に、女性議員を中心に野党側は激怒した。
福田氏は「キスしていい?」「おっぱい触っていい?」など、世間ではセクハラと受け止められる発言をしたとされ、「一部も全体も、どうみてもセクハラだ」との批判が続出。また、財務省による女性記者への調査方針も中立性に欠けるとして、撤回要求が相次ぎ、財務省の担当者は「委託先とも相談したい」と、調査手法の見直しを示唆。一方で「複数の被害者がいる可能性があり、そのための窓(委託先)は開けておかないといけない」と述べ、テレ朝以外の告発が出る可能性にも言及した。
弁護士でもある福島瑞穂参院議員は「セクハラじゃないということ自体が、セカンドレイプだ」と、福田氏の発言を厳しく批判。各党は福田氏本人が会見で説明するよう求めたほか、財務省がテレ朝に出向いて謝罪すべきとの認識も示した。また、辞任する福田氏の退職金が約5000万円とされることを念頭に「辞任か更迭かで扱いが異なる。(満額を払うか)国民が見ている」と、けん制した。
福田氏を守り続けた麻生氏の責任は避けられず、野党は引責辞任を要求したが、自民党は応じない構え。与野党対立の激化で20日以降、国会は事実上ストップする。野党は「セクハラは安倍政権ぐるみで続いている」とも批判。安倍晋三首相の責任も追及する。【中山知子】