WBA世界ミドル級王座の初防衛に成功したプロボクサーの村田諒太(32)が試合前、「何度も何度も繰り返しページを繰っている」とインタビューで明かした「夜と霧」(みすず書房)がアマゾンの書籍ランキングでベストテン入りし、在庫切れの人気となっている。みすず書房は16日に増刷した。

 「夜と霧」は第2次世界大戦中、ナチスドイツによって強制収容所に入れられ、奇跡的に生還したユダヤ人心理学者ビクトール・フランクル(1905~97)がその過酷な体験をつづった。死と隣り合わせで、いつガス室に送られるか分からない状況での生きる意味を考える作品だ。56年(昭31)に日本語版が発行され、85年には新装版、02年には新版が発売。トータルで100万部を超えるロングセラーだが、村田が「父から勧められ、深い影響を受けた」と書名を挙げたことで再び火が付いた。

 みすず書房の飯島康さんによると、今月1日、TBSテレビ系「情熱大陸」で、女優の門脇麦(25)も「これは私のバイブルなんです」「今の時代を生きている私たちが希望を持たないでどうするっていう気持ちになります」と「夜と霧」を紹介したという。「若い門脇さん、村田さんに書名を出していただき、すごい反響です」(飯島さん)。

 東京・西池袋のくまざわ書店池袋店では、村田と門脇の名を書いたポップ(店頭広告)を掲出した。「人文書なのに求める方が多く、一時品切れになった」という。村田と門脇のハートに届いた「夜と霧」。読売新聞の「読者の選ぶ21世紀に伝えるあの一冊」のアンケートでも「世界の名著」部門で「アンネの日記」「論語」に続く3位に入っている。【中嶋文明】