女性記者にセクハラ発言を繰り返したと報じられた財務省の福田淳一事務次官(58)が24日に辞任したが、本人はセクハラを認めておらず、国会などの混乱は収まりそうにない。日刊スポーツは同省記者クラブ「財政研究会」に常勤する加盟24社に対し、25日午後5時までにアンケート取材を実施し、16社が回答。被害を公表したテレビ朝日を含め、福田氏からのセクハラ被害調査を、6社で実施していることが分かった。複数の女性記者にセクハラ発言をしたとの報道もあり、テレ朝以外の社からも被害報告があれば、麻生太郎財務相の任命責任はさらに厳しく問われそうだ。

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 「過去も含め福田氏からのセクハラ被害を社内調査していますか」との問いで新聞、通信社、テレビ各局の5社が調査中、調査済みと回答した。テレ朝は今回のアンケートに「当事者につき回答は控えたい。ご理解ください」とコメント。ただ同社幹部は取材に、当該の女性社員以外にも被害がなかったか調査していることを明かした。

 麻生氏は「週刊誌報道だけでセクハラと認定して処分するのはいかがなものか。はめられたとの意見もある」と発言しているが、各社の調査次第では被害者が増える可能性がある。「今の段階で進退を考えているわけではない」と話すが、そうなれば次官辞任だけでは済まない状況だ。

 一方、今回の問題は取材場面におけるセクハラ実態を考え直すきっかけにもなった。TBSテレビ社長室広報部は「被害を受けた場合は、直属の上司に報告相談するよう改めて指示した」とコメントした。日本テレビ広報部は「報道局では改めて取材の基本ルールを確認し、ハラスメント被害が生じた場合は被害者保護の徹底を周知した」と回答。さらに「個人の尊厳を傷つける行為には、毅然(きぜん)とした対応を取る」と厳しく答えた。

 共同通信は防止規定の他、社内文書で対処法や取材先との関係に関するアドバイスを掲載。さらに「相談窓口は社内だけでなく第三者の専任カウンセラーが対応する外部とも契約している」(総務局)と三重の対応策を敷いているとした。

 毎日新聞はハラスメント被害を受けた際の対応をパンフレットや社内サイト、各階層別研修で周知を徹底。「部下を守ることを最優先に考え、毅然(きぜん)とした対応を取る」(社長室広報担当)と回答した。

 時事通信総務局によると、女性記者のセクハラ被害相談を受けた場合必ず局上層部に報告すること、との編集局長名の通達を19日付で編集局全部長、国内外の支社総支局長に周知。また、20日付の社内報で「女性記者に忍耐を強いるような指示や、相談の黙殺をせず、傍観者的な態度を取らない」よう要請した。【清水優、三須一紀】

 ◆財政研究会 財務省の取材を行う新聞、通信社、テレビ局で作る記者クラブ。常駐加盟社は(順不同)読売新聞、朝日新聞、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞、産経新聞、時事通信、共同通信、日本工業新聞、日刊工業新聞、北海道新聞、西日本新聞、京都新聞、神戸新聞、ジャパンタイムズ、ロイター、ブルームバーグ、ダウジョーンズ、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビの計24社。財務省によるセクハラ被害の調査協力要請に対し、同省の顧問弁護士による調査の中立性への疑念と、被害者が名乗り出ることは二次被害につながる恐れがあるとして、20社が抗議文を提出した。