財務省は27日、テレビ朝日の女性記者へのセクハラを「週刊新潮」に報じられた福田淳一・前財務事務次官(58)について、女性へのセクハラ行為があったと認定した。その上で、6カ月の減給20%の懲戒処分に相当すると発表した。

 会見には麻生太郎財務相は姿を見せず、矢野康治官房長ら幹部が、「責任を負うべき事務次官が問題を起こし、行政の信頼を損ね、国会審議にも混乱をもたらしていることは誠に遺憾。関係者におわび申し上げる」と、謝罪した。

 福田氏は財務省委託の弁護士から受けた3回の調査で、今月4月4日夜にテレ朝の女性記者と1対1で飲食したことは認めたという。セクハラは今も否定しているというが、被害を訴えたテレビ朝日の発表を覆すだけの反論、反証がなく、財務省は、4月4日の会食という被害者、加害者の「1点の接点」をもって、セクハラを認定。「断定ではなく認定」と繰り返した。

 福田氏の言い分については「2次被害」を理由に公表されなかった。テレ朝には、被害女性に謝罪の意を伝えるよう要請した。

 矢野官房長は「これ以上の事実解明は難しい。調査に時間をかけると、2次被害が拡大する恐れもある」と述べ、調査の打ち切りも宣言。福田氏には、支払い留保中だった約5319万円の退職金から、懲戒分の141万円を引いた約5178万円が支給される。人事院のガイドラインで「言葉によるセクハラ」が戒告か減給とされることに準拠したというが、“処分された感”がまったく感じられない甘さは、否めない。

 一方、福田氏のセクハラに関し、テレ朝以外の1社からも匿名での電話相談があったという。被害の声が拡大する前の調査打ち切りに加え、大型連休前の処分発表には、記者の疑問が相次いだが、財務省側は「連休明けでもこれ以上の事実認定は難しい。駆け込みではない」と、釈明した。麻生氏の「はめられたという声もある」など、心ない発言への謝罪もなかった。

 矢野氏は、「セクハラやパワハラはあってはならない。財務省は先進的な取り組みの組織と言われるよう、変わらないといけない」と意欲を示したが、失墜した最強官庁への信頼が戻る保証はない。後手に回った数々の対応も、それを物語っている。【中山知子】