東京都の築地再開発検討会議の最終会合が21日、都庁で行われ、小池百合子知事に報告書が提出された。小池氏が昨年6月、「食のテーマパーク」機能を有する新たな場へ再開発する基本方針を表明したが、不利益を被るとして反発する豊洲市場の観光拠点「千客万来施設」の事業者を考慮し、「食のテーマパーク」は明示されなかった。

 近藤誠一座長(元文化庁長官)は「(築地再開発と)有機的につながり、豊洲、千客万来との関係においても両者を活かすようにしてほしい」と千客万来施設の事業者に配慮する一方で、「日本人の食生活、食習慣の根幹を成しているのが築地。せっかくの『食ブランド』を生かしてほしいので、大枠を示すことにとどめた」との本音も漏れた。

 基本方針では、「築地ブランドの核は仲卸を中心とした食材の『目利きの技』」、「日本で唯一、市場がブランドになった稀有な存在」とも示し、一部の仲卸業者が市場機能の存続を期待したが、それも報告書には示されなかった。

「築地まちづくりの大きな視点」と題した報告書は(1)立地条件の最大活用、(2)時間軸を見据えた周辺との有機的なつながり強化、(3)地域ブランド価値の再構築、(4)新たな築地が持つべき機能と空間のあり方、(5)ガバナンス体制の構築、の5項目を基本的な考え方とした。

 近藤氏は特に(5)を強調し「良い案だねと言って(報告書を)棚にしまうのではなく、再開発するに当たって常に参考にして大枠がしっかり守られていくガバナンスを構築してほしい」と語った。将来的に築地再開発は民間事業者の選定を行うが、「経済的合理性に引っ張られるがちなのが再開発だが、あくまでも都民にとっての価値や、歴史、文化を大事にするためのガバナンスだ」と主張した。

 (5)では築地市場23ヘクタールの敷地において「閉じた開発とせず、効果を波及させ、広域の価値の向上を図ることが重要であり、23ヘクタール内の民間開発部分の収益の最大化を求める従来のような手法では、全体最適とはならない」とくぎを刺した。

 近藤氏は小池氏に対し「この報告書を是非参考にしていただけるよう、小池知事のリーダーシップを発揮してほしい」と要望。報告書を受け取った小池氏は「築地のポテンシャルを生かして魅力と価値を高めることが目標だった。鳥の目の大きな視点で取りまとめられた」と評価した。