米山隆一前知事(50)の辞職に伴う新潟県知事選(6月10日投開票)は27日、告示後のファーストサンデーを迎えた。自公が支持する元副知事で前海上保安庁次長の花角英世氏(60)と「野党統一候補」の元県議池田千賀子氏(57)がしのぎを削る。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる地元同意のあり方が大きな焦点。新潟で「野党共闘4連勝」を狙う野党と、森友・加計問題などで批判を受ける安倍政権を直撃しかねない知事選で負けられない与党の直接対決の構図だ。他に元市議の安中聡氏(40)が立候補している。

 立憲、国民、共産、自由、社民の野党5党の推薦を受けた「野党統一候補」の池田氏も、自公が「支持」した花角氏も、米山氏が立ち上げた東京電力福島第1原発事故の検証委員会の結果を待つ姿勢は似ている。ただ、色合いは異なる。

 演説で花角氏は、新潟県を「県民丸」という船に例え、「船長としての最初の仕事は、乗り合わせたみなさんの思いを確認し、実現していくこと」と話した。「乗員」の一番の不安を「原発かもしれません」とし「冷静な検証をしてもらい、結果を県民丸に示す。納得感がないかぎり進まない」と訴える。

 花角氏は検証を2~3年待ち、意思決定の際は辞職して再選挙で問うと言及している。ただ、再稼働に対し、どちらの立ち位置で再選挙に出馬するかは明らかにしていない。大票田の新潟市で行った27日の演説では再稼働には触れず、空港、港湾、新幹線の交通インフラの接続、新規ビジネスの後押し、人口減対策などの訴えに力を入れた。

 与野党対決となった2月の名護市長選で米軍基地問題に対する態度を明示せず、市民生活向上を訴えて当選した与党側候補の戦略とも重なる。再稼働の争点隠しと野党は批判するが、中学時代の同級生の私立高校教諭の男性(59)は「県民投票では県議会が反対すれば実現できない。職を賭して県民にはかる花角の方が、より現実的で責任ある考え方だ」と反論した。

 池田氏は、より色濃い「慎重さ」を強調している。原発ゼロを掲げ、施行後5年で全原発の廃止と立地地域の経済的なケアを約束する立民、共産、自由、社民の野党4党が衆院に提出した「原発ゼロ基本法案」を支持。検証委の結論を3年待ち「県民投票」で再稼働の是非を問う考えだ。しかし、電力系労組と近い国民民主党は選対活動の事務所も別。どこまで足並みがそろうかは未知数だ。

 池田氏は演説で「中央官僚が全国一律の仕組みを作るのは大事だが、新潟のことは新潟が決める」と訴えた。市職員、市議、県議として地方行政に携わった自身と、運輸省(現国交省)官僚で自民党の二階俊博幹事長の運輸相時代の秘書官だった花角氏との立ち位置の違いを強調する作戦だ。

 選対本部長で、連日演説に同行する菊田真紀子衆院議員は「二階さんの秘書官が県民の代表になった時、再稼働の問題を本当に任せて大丈夫か」とし、与党の支持を受ける花角氏の「慎重姿勢」に、より直接的な疑問符を投げかけている。【清水優】

 ◆新潟の与野党対決 野党3連勝中。16年7月の参院選では野党と市民団体の支援を受け、統一候補として出馬した無所属の森裕子氏が自民現職に勝利。同年10月の知事選でも柏崎刈羽原発再稼働に反対する米山隆一氏を野党統一候補として推し、自公の推薦を受けた前長岡市長らを破った。17年の衆院選でも野党は共闘し、6つの小選挙区中4区で勝利した。だが米山氏が先月、女性問題で知事を辞職。与党側は米山氏を推した野党共闘への批判を強めている。