故障から代表離脱の危機を乗り越え、コロンビア戦に途中出場し、勝利のホイッスルを聞いた日本代表FW岡崎慎司(32=レスター)。岡崎に夫婦の絆を取り戻してもらったとして、深く感謝し、日本から声援を送り続ける人物がいる。

 岡崎が小中学時代に所属した「宝塚ジュニアフットボールクラブ」の監督、故田尻克則氏の妻ゆかりさん(56)だ。克則氏は、30代の時にバイク事故に遭い下半身が不自由になった。

 ゆかりさんは当時「不自由な夫を抱えるにはまだ若いから」との周囲の意見を受け入れ、離婚を選択した。以来、約20年、音信不通に。ゆかりさんは「年を重ねるにつれ、大変な時に夫を1人にしてしまった。あの事故が原因でもう亡くなっているのでは」と後悔を募らせていたという。

 そんな時、岡崎と「元指導者」として克則氏が掲載された記事を目にした。ゆかりさんが連絡し、復縁。「岡崎くんがもう1回出会わせてくれた」。岡崎が夫妻を再び結びつけた。

 09年頃、克則氏と、再び「夫婦」に戻ったが、一昨年3月、克則氏の肺がんが判明。同7月、克則氏の体調が悪化し、亡くなった。その直前、岡崎の母が見舞いに訪れ、イギリスにいる岡崎とテレビ電話をつないだ。岡崎は「監督に教えてもらったことはいっぱいある。考えてくれたメニューを覚えている。日本に来たらすぐ行く」と告げ、克則氏も「慎司が一番好き。慎司を忘れるわけはない」。再会を楽しみにしていたが、この数日後に息を引き取った。ゆかりさんは「最後の力を振り絞って、エールを送ったのでは」と、涙をこらえながら振り返った。

 ゆかりさんは「(夫が)天国から見守って、岡崎くんの後ろにいる。W杯ではきっと活躍する」と確信している。【鶴屋健太】