日本の第2戦(24日、対セネガル)の開催地エカテリンブルクには、「ロシア唯一かもしれない」というメイド喫茶がある。街の中心部にあるその店の名前は「holy maid cafe」。開店してまだ半年で、店もメイドも試行錯誤中だが、ロシア全土からファンが集まるなど評判は上々だ。日本人サポーターを迎える準備もしっかりと進めている。

 「お帰りなさいませ、ご主人様」。メイドのモモちゃん、フクロウちゃんが日本語で元気よく迎えてくれた。店内は日本のマンガやポスターであふれ、BGMは有名なアニメソング。ロシアにいながら日本を感じることができる。マネジャーのオリグさん(41)は「珍しいだけでなく、日本文化を紹介できるような店にしたかった」と説明した。

 オープンは約半年前。それまで普通のカフェだった店を改修し、メイド喫茶をつくった。首都モスクワでもメイド喫茶が開かれたことはあるが、需要が少なくすぐに閉店。オリグさんは「ロシア人で日本のアニメやコスプレが好きな人は多いが、上っ面をまねただけの店は愛されなかった」と分析。この店が「今、ロシアで唯一のメイド喫茶かもしれない」と語った。

 ただ、オリグさんをはじめ、店の関係者は誰も日本に行ったことがない。エカテリンブルクには日本語学科がある大学もないため、街の中心部にある「日本情報文化センター」の手を借り、日本文化や料理、メイドの知識などを学んだ。現在も毎週のように会議を行うなど、試行錯誤を続けている。

 店の評判は高い。物珍しさで来店した客のほとんどがリピーターになった。「日本が好きな人、落ち込んだ人、単純にメイドと話がしたい人など、今ではロシア全土からこの店を目的にエカテリンブルクに来る人がいる」とオリグさん。来店したある日本人女性は「久しぶりの日本だ」と感動して涙を流したという。

 メニューの「おにぎり」が「おにぎらず」だったり、「お召し上がり下さい」と言うところが「お召し上がりなさい」だったり、小さなミスにも好感が持てる。メイドとの距離感も近く、写真撮影やお話はもちろん無料。人気のオムライスは200ルーブル(約350円)と料理の値段もお手頃だ。

 試合を観戦に来る日本サポーター向けに日本語メニューの準備も進めている。店内には大型のテレビも設置する予定。オリグさんは「明るい雰囲気でみなさんを迎えたい。日本人が来たら『お帰りなさいませ』と歓迎します」と意気込んだ。【太田皐介】