西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区では、幼稚園や小中学校、定時制高校が全て臨時休校となっている。豪雨以来登校することなく、20日からそのまま夏休みに入るため、子どもたちは約2カ月もの間、勉強する場所を失った状態になる。同地区の学習塾「明光義塾真備教室」も建物が浸水する被害に遭ったが、12日からは塾生以外の子どもたちにも教室を無料開放、学びの場を提供している。

 細長い机が4つと、椅子が10脚ほど置かれた簡素な部屋。この場所が、真備町地区の子どもたちにとって貴重な勉強場所になっている。15日は日曜で塾自体が休みだったが、12日から3日間で計32人が集まった。塾の経営者、岩崎勲(いさお)さん(64)は「学校は休校が続いて、そのまま夏休みになる。避難所や自宅では集中できないだろう。何より最優先で、塾を復活させる必要があると思った」と話した。

 同地区箭田にある教室も、豪雨で被害を受けた。一時は事務所がある2階の、腰以上の高さまで水かさが上がった。講義室だった1階は完全に浸水。水が引くまで丸2日がかかり、教材やホワイトボード、コピー機などは全て使えなくなった。教室前の駐車場は、約5センチの厚い泥で覆われた。

 それでも、「自分に与えられた試練だと思った。すぐに『やってやろう』という気持ちになった」と岩崎さん。同塾では、小1~高3まで85人が学んでいる。高校、大学受験を控えた生徒も多い。それ以外にも、この場所を必要としている子どもたちが、たくさんいると感じた。水が引いた9日午前から、すぐに片付けを始めた。比較的被害の少なかった2階部分を、臨時の教室にすると決めた。

 自身も被災した講師たちが、自宅の片付けより優先して手伝ってくれた。塾生やその家族が駆けつけることもあった。教材などは近くの同系列の塾から集め、浸水から4日で再開にこぎつけた。岩崎さんは「冷房はつかないが、トイレも使える」。電話やネット回線はまだ復旧していないが、最低限の環境は整った。

 教室の無料開放は毎日午後3~6時まで(日曜、お盆時期を除く)。常に講師がおり、塾生でなくとも分からない問題は質問できる。岩崎さんは「勉強はもちろん、避難所生活で離ればなれになった友達とここで会うのもいい。友達も誘って、ぜひ来てほしい」と呼び掛けた。【太田皐介】