東京医科大の贈収賄事件と不正入試問題で、同大の内部調査委員会が7日、都内で記者会見し、文部科学省の前局長佐野太被告(59=受託収賄罪で起訴)の息子ら一部の受験生の点数を不正に加点し、不正に合格させ、入試要項にない方法で、女子や浪人生が不利になる調整も行っていたと正式に認定した。大学側も続けて会見し、贈収賄事件と不正入試について謝罪。不正入試で不利益を受けた受験生の救済について「誠心誠意対応したい」とした。大学は第三者委員会を立ち上げ、今後も調査を続けるという。
内部調査委員会の中井憲治弁護士は「中立の立場」を強調したが、辛口の報告となった。前局長に対する前理事長臼井正彦被告(77=贈賄罪で在宅起訴)と前学長鈴木衛被告(69=同)の贈賄と、前局長の息子を不正に合格させたことを「認定できた」とした。東京地検に資料が押収されている中での調査だったが「十分訴訟リスクに耐えられる」とした。
報告書によると、本年度は前局長の息子を含む6人、17年度は13人が1次試験で加点されていた。多い受験者で400点満点中、最大49点の加点があった。小論文の2次試験では本年度、受験生全員の得点に80%をかけて減じた上で、現役男子、1~2浪男子に20点、3浪男子に10点を加点。女子と4浪の男子には加点していなかった。
報告書は、女性受験者への差別について「(聴取によると)『女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる』というのが得点調整を行った理由のようだ」とし「断じて許される行為ではない」とバッサリ。浪人年数による差別も「受験生への背信行為」と断罪し、不正入試を「大学の自殺行為に近い」とした。同窓会からの寄付金欲しさに同窓生の子弟を優遇した可能性がある。
臼井被告をめぐっては、96年ごろから合格者を「調整」していた。本年度のような「得点調整」は少なくとも2006年から行われてきた可能性を指摘。臼井被告の理事長就任以前からということになる。報告書も「長年にわたり、いわばあしき伝統のように行われていた」と指摘。中井弁護士は「長きあしき慣行。みんなあうんの呼吸で、ずるずると続けていたという予想はできる」と話した。
大学側は冒頭、贈賄事件と、女子受験者に対する差別を含む不正入試問題について陳謝した。会見した行岡哲男常務理事と宮沢啓介学長職務代行は、入試の不正を知っていたかを問われ、「知らなかった」とした。
一方で、報告書には、看護学科学務課課長は17年の入試委員会に、性別や浪人年数による「得点調整」の資料を提出したとし、入試委のメンバーは「知っていたはず」とも記してある。入試委メンバーだった宮沢氏の発言と矛盾するが、同氏は「私は否定したいが、言ってはいけないと思っている。何枚つづりかで(資料が)出され、委員が認識する前に回収されたのでは」と話した。
不利益を被った受験者や、不正を知っていた職員の範囲など、真相究明にはほど遠い状況だ。【清水優】
◆東京医科大 東京都新宿区に本部がある私立大学。1916年に東京医学講習所として設立され、46年に現在の名称になった。医学部のみの単科大学で医学科と看護学科がある。2018年度の入学者数は医学科120人、看護学科94人。医学研究科のみの大学院や医学総合研究所、看護専門学校などを持つ。大学院も含めた学生数は約1400人。建学の精神として「自主自学」を校是として「正義・友愛・奉仕」を掲げている。