自民党総裁選は20日、投開票され、安倍晋三首相(64)が石破茂元幹事長(61)を破り、3選を決めた。

国会議員の8割超が首相を支持する中、小泉進次郎筆頭副幹事長(37)は前回と同じ、石破氏に投票した。「違う意見を押さえつけるのではなく、違う声を強みに変える自民党でないといけない。そんな判断から投票した」と述べた。

地元神奈川の自民党国会議員20人のうち、自身以外の19人が首相支持。「1人くらい、違ってもいいだろうという思いもあった」と打ち明けた。ふたを開ければ、同県の国会議員に圧倒的支持を受けた首相が2万票で、石破氏は1万3000票。「(大差でなく)驚いたが、地元で聞く声と近い」と強調した。「悩まない政治家はいないが、私の中では(当初から)決まっていた」と述べ、「日本は、多様な時代に突入する。違っていいじゃないですかあ」と、笑みを見せた。

進次郎氏は首相支持など、臆測が飛び交った情報戦。「総裁選は政治の世界の戦(いくさ)だ。戦だから何でもあり」。だから、自身も効果的なタイミングを探り、沈黙を続けながら開票直前、電撃的な公表に踏み切った。早々と石破氏支持と言っていれば流れが変わった可能性もあるが、「表明しないからこそ、2人の論争が注目された。私は打席にいないのに、ネクストバッターズサークルやベンチが映されるのはおかしい」と、自身の影響力を考慮したとも述べた。

前回、石破氏に投票した際は「新しい自民党」への思いを託した。その自民党は今、首相にものを言えない空気が漂う。進次郎氏は「違う考えがあると私が言った時、『後ろから弾を撃っている』と。そう評されるのは本意ではない」と、苦言も。「チャンピオンなのにチャレンジャーのように徹底的にやる。戦に臨む姿勢としては敬意を表する」と、首相陣営の熾烈(しれつ)な戦法には、皮肉にも聞こえる論評をした。

人事の希望は答えなかった。首相に「腹の底からやりたいことを完全燃焼してほしい」とエールを送りつつ、「違いを、論争の質を上げたり、課題解決の推進力に変えないと」。最後までくぎを刺すことを忘れなかった。【中山知子】