翁長雄志氏の死去に伴う沖縄県知事選は23日、最後の日曜日を迎えた。安倍政権が支援する佐喜真淳氏(54)と、翁長氏の“後継”玉城デニー氏(58)の舌戦は日々激化。「対立より対話」と翁長県政の転換を訴える佐喜真氏は、経済政策からプロ野球球団誘致まで公約。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を唱える玉城氏の集会では、翁長氏の樹子夫人が涙ながらに「弔い戦」の必勝を訴えた。総裁選3選を果たした安倍晋三首相の今後にも影響する戦いは、接戦で後半戦に入った。30日投開票。

ラストサンデーの23日、佐喜真氏と玉城氏は対照的な主張を訴えた。

那覇市で行われた佐喜真氏の演説会には、2週連続で小泉進次郎筆頭副幹事長が入った。選挙応援に駆り出されることが多い進次郎氏でも、2週連続のリリーフは異例。翁長氏に「敬意を表する」と露骨な対決姿勢は示さず、翁長氏が知事就任前に那覇市長だったことに触れ、「(知事になる上で)首長の行政経験は大きい。宜野湾市長だった佐喜真さんも、実績と経験を発揮できる」と絶妙に重ねた。「相手は本気だ。ギアを1段上げなければならない」と、ハッパをかけた。

佐喜真氏は、翁長氏が最後まで訴えた辺野古移設の是非には触れず「日米地位協定の見直し」を主張。全国最低の県民所得の向上など経済政策に加え、プロ野球球団設立を「前に進める」と豪語。「対立より対話だ。過去は変えられないが未来はつくることができる」と、安倍政権とのパイプをにじませながら訴えた。

結果は、首相の政権運営にも影響するだけに、自民は負けられない戦い。公明、日本維新の会も合わせて東京から職員や秘書が大挙沖縄入り。県民の支持動向をつかもうと、地域から年代まで細かく分けた必死の情勢調査も続いている。

玉城氏は那覇市の演説で「新基地は絶対につくらせない」と強く訴えた。父は米国人で、母は日本人。いじめにあった幼少期の経験も打ち明け、「多様性が求められる今の時代、自分が翁長さんのバトンを受け取るのは運命だ」と話す。

一方で、陣営は翁長氏の存在をより意識した戦略にシフト。翁長氏の遺志をあらためて県民に思い起こさせるためだ。前日22日の那覇市での集会では、生前の翁長氏の声がテープで流れ、樹子夫人が告示後、初めて公の場に登場。「翁長が恋しい」と涙を流す夫人に、約4000人の聴衆はもらい泣き。「表に出ることはちゅうちょしたが、権力を行使し県民を押しつぶそうとする日本政府はあまりにひどい。簡単には勝てないが、簡単には負けない」と怒りをにじませ、終盤は街頭にも立つ予定だ。次男で那覇市議の雄治氏も「組織に勝つにはスクラムを組むしかない」。翁長氏の四十九日に合わせた意見広告も検討されている。

今週後半、沖縄に台風が近づく可能性もあり、両陣営は、期日前投票の徹底も呼びかける。ネット上では、投票した候補名の写真を撮らせて報告させるケースがあるとの話も飛び交う。特定候補の数字が突出した出所不明の調査が出回るなど、情報戦も激化。「沖縄の選挙は最後の3日で変わる」といわれることも、仁義なき戦いをさらに厳しくしている。【中山知子】