プラスチックから紙のストローへ。外食産業やホテル業界を中心に、今年の夏からこんな動きが加速し始めている。

きっかけは今年7月、米コーヒーチェーン大手の「スターバックス」が、2020年までに世界中の店舗でプラスチック製の使い捨てストローを全廃すると発表したこと。これに呼応して海洋汚染、環境保全のため、プラスチック製ストローの順次廃止、紙への変更をホテル業界や外食産業が続々と発表し始めた。

米ホテル大手のヒルトンは「コンラッド東京」など日本国内14ホテルで使うストローを赤、青、白のしま模様の紙製に切り替えた。「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」(東京・新宿)も、9月下旬から直営レストランなどで始めた。小田急の場合、直営施設で消費される年間5万5000本を、紙製で提供するなどの対応をしている。

ファミリーレストラン「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングス、「デニーズ」なども、同様の宣言をしている。

降って湧いたような需要増に、生産が追いつかなくなっているのも現状だ。あるホテルは、「注文が殺到し、納品は2~3カ月待ち。生産・供給ラインを確保するため、発表を引き延ばした」と話す。紙ストローといっても、途中で曲がるタイプ、かき氷に付いてくる先が丸いタイプは、市場でお目にかかれない。しかも、1本の単価はプラスチックの約1円に対し、10倍近くかかる。コスト高に対応を迫られる企業も出る。

まず動きだしてから考える形で始まった、変更の動き。10年ほど前、外食産業などで割り箸からエコ箸へと切り替わった時は、不満がそんなに出なかった。

料飲に関係する企業は安全や安心、エコへの姿勢が問われる。同時に、出版不況からの追い風を受けそうな製紙業界は、「ものづくり大国」としての技術力が試されそうだ。【赤塚辰浩】

◆情報の電子化、出版不況など厳しい状況だった製紙業界にとって紙ストローは追い風だ。「環境に優しい点が再認識された」と、日本製紙連合会では手応えをつかんでいる。王子ホールディングスはストロー用の原紙をメーカーに売り込み始めた。他社も耐水性を強めた紙製の試供品を出すなど対応している。