神奈川県大井町の東名高速道路で昨年6月、あおり運転を受け無理やり停車させられ、萩山嘉久さん(当時45)友香さん(当時39)夫婦が別のトラックに追突され死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)の判決公判が14日、横浜地裁で行われ、懲役18年が言い渡された。

判決の前に裁判官から「何か言いたいことは」と問われた石橋被告は、10秒ほどの間の後、意味を測りかねるかのように少し首をひねり「ないと…」と一言。口は少し開き、表情に緊張した様子はなかった。

裁判官と裁判員が一時退廷後に判決が言い渡された際は、石橋被告は仁王立ちのまま大きな反応を示すことなく、上体を少し揺らしただけだった。上下黒いジャージーにメガネ、少しボサボサの髪にサンダル姿。右手にハンドタオルを握りしめ、裁判官に促され着席すると鼻に手を当てすすった。

裁判官からは「家族旅行の帰りに、突如生命を奪われた被害者の無念さは察するにあまりある。両親を失った遺族の悲しみは深く、厳罰を求めるのも当然。(発端となった)パーキングエリアでは駐車場所に駐車できたのに、通路に止めたことが問題であり、非難を受けたからといって犯行に及んだことは常軌を逸している。(余罪などを否認していたことも)真摯(しんし)に反省しているとまでは評価できない」などと厳しい言葉が並んだ。

石橋被告は当初、大きな反応を見せず聞いていたが、説明が数分を経過したあたりから、下を向いたり、耳をかき始めたりした。肩で大きくため息をついたり、右手のタオルをいじったり、腕を組む場面も。最後に判決をもう一度確認されると「はい」と小声で返事し、左手で口元を触った。

検察席の後方では萩山さんの母文子さんらが見守ったが、石橋被告が文子さんに目を向けたり、意志を示すような場面は見られなかった。

争点となった危険運転致死傷罪については、事故発生時に被告および被害者が停止中だったため「実行行為」としては認められなかった。しかし石橋被告の車線変更などによる4度の妨害運転と、これと密接に関係した被害者の車の停止によって、死亡事故が誘発されたとの「因果関係」が認められ、同罪が適用された。